長引く口内炎
舌がんの疑い
県立がんセンター頭頸科
鈴木 政美さん
今年2月、タレントの堀ちえみさんが公式ブログで、最も進行しているステージ4の舌がんであることを公表し、各メディアでも大きく取り上げられた。命の危険はもちろん、飲み込みや発声、味覚など日常生活に支障が出る。県立がんセンター頭頸科部長の鈴木政美さんは「口の中の異常が2週間以上続いたらすぐに専門医を受診してほしい」と訴える。
早期に専門医受診を
舌や歯茎、上あごや頬の粘膜などにできるがんを口腔がんと呼んでいます。そのうち5割を占めるのが舌がんで、口腔がんの中で最も多く、年間約4000人が発症しています。舌がんは舌の中央ではなく、多くは舌の脇にできます。
今年1月に国立がん研究センターが発表した最新がん統計(2016年)では、すべての部位のがん罹患数は約100万人で、舌がんの割合は決して高くはありませんが、進行すると、5年生存率が50%を割り込むため、早期発見、治療が重要です。
診療科は耳鼻咽喉科もしくは歯科です。始めは口内炎だと思って受診することが多く、自覚症状として、舌が痛い、舌に硬いしこりやただれ、舌の脇に赤や白の斑点ができたりします。2週間以上治らない場合は、舌がんの疑いがあります。早期に診療科から紹介を受け、頭頸部外科か口腔外科の専門医を受診してください。
喫煙と飲酒は要注意
舌がんになる大きな原因は、喫煙と飲酒です。また、歯が内側に向かって生えるなど常に舌に接触し、慢性的に刺激を受けることによって発症することもあります。
遺伝とは関係なく、生活習慣によるところが大きいです。男女比は2:1で男性、年代は50、60代に多く、20代の若い人も比較的多く発症するがんです。
予防としては、禁煙、節度ある飲酒、バランスの良い食事などが挙げられます。酒を飲んで顔が赤くなる人は、代謝が悪く、発がん性物質のアセトアルデヒドが蓄積しやすいので注意が必要です。日本人の3割近くがそうした体質だと言われています。
治療としては、がん部分を取り除く手術が中心です。舌の半分以上を切除した場合は、機能維持が難しいため、範囲の大きさに応じて、前腕部や大腿部、腹部などから採取した皮膚や脂肪、筋肉などの組織を移植する再建手術を行います。そのほか、放射線治療や抗がん剤治療があります。
早期発見のがんでも3割は首のリンパ節への転移が見られます。今後転移が起こる可能性が高いと判断された場合でも、リンパ節を周囲の脂肪組織と一緒に取り除く手術を行う必要があります。
リハビリで回復目指す
味覚は舌が持つ機能のため、再建手術をしても障害が残ってしまうことがありますが、飲み込みや発声はリハビリで回復することができます。
担当医や摂食・嚥下障害の認定看護師らの指示でリハビリを行います。飲み込みづらくなった場合は、一番むせやすい水はとろみをつけ、ほかの食事もどろどろした状態にして食べる訓練を行います。発声では、どの部位を動かせばうまく発音できるか練習して回復を目指します。
高齢化に伴い、舌がんを含めたがん全体の罹患数が年々増加しています。何よりも早期発見が肝心です。異常を少しでも感じたら放置せずに早めに受診してください。