人類最古の甘味料
「蜂蜜」
ミツバチたちの
努力の結晶!
小さなミツバチが野原を飛び回り、集めた花の蜜を巣の中で加工し貯蔵した蜂蜜は、人類最古の甘味料とも言われている。栄養が豊富で、主成分の果糖やブドウ糖は素早く体内に吸収されるので、疲労回復などに効果的。また、抗菌作用もあり、古くから薬などに利用されている。養蜂により手軽に手に入るようになった蜂蜜を、身近な食卓の一品に加えてみてはいかが─。
養蜂箱でセイヨウミツバチを飼育し、ハチが集めた花の蜜を採集して食用として出荷する養蜂業。高山村の本間さんも、養蜂を生業とする1人だ。
本間さんが主に採集している蜜は、アカシア、トチ、クリの3種類。それぞれの花の季節になると、吾妻をはじめ県内各地に花を求めて養蜂箱を移動する。
「開花の時季は短いので、5月初旬から7月半ばまで2カ月半が勝負です」と本間さん。採蜜期の養蜂箱を見せてくれた。防護用のネットをかぶり、燻煙器の煙でハチの活動を鈍らせてから中の巣枠を取り出す。蜜がたっぷり付いていて、甘い香りが周囲に漂う。日焼けした本間さんの両腕には、たくさんのハチに刺された跡が残る。「最近は刺されても腫れなくなりました。でも、とっても痛いです」と苦笑する。
純粋蜂蜜にこだわり
父親が始めた養蜂の仕事を継いだのは24歳のとき。当時、建設会社に勤めていた本間さんは、お世話になった人や会社の同僚らに、採れたての蜂蜜をプレゼントした。「大変喜んでくれたのでうれしくなり、自分でもやってみたくなりました」と、養蜂の道に進むきっかけとなったエピソードを語る。
養蜂は天候に左右されやすいのが難点だという。雨天が続くとハチの活動が鈍る上、花の寿命も短くなり、採蜜の量が減ってしまう。「今年は雨の日が多かったので、例年に比べて〝不作〟です」と顔を曇らせる。
ハチが集めた蜜は、自宅の作業所に設置した遠心分離器に巣枠ごとかけ、採取した蜜をろ過器に3回かける。純粋な天然の蜂蜜を得るためには、決して手間暇を惜しまない。
瓶詰めやラベル貼り、包装などの作業は、妻の暁子さん(37)が担当。父の利雄さん(72)は木製の養蜂箱を手作りしてくれる。
完熟合図を待って採蜜
一般にミツバチが集めてきた花の蜜は、水分が60%含まれている。巣の中では、これを働き蜂が羽ばたきで20%前後まで蒸発させ、蜜ろうでふたをする。これが完熟の合図といわれている。
本間さんは完熟にこだわり、小さな巣穴のような〝蜜つぼ〟がすべて蜜ろうでふさがるまで採蜜作業を行わないようにしている。「わずかな糖度の差が、味の良し悪しにつながりますから」
病気やダニ対策に気を配り、常にハチたちの良好な環境維持に努めている。こうした努力が実り、県産はちみつ品評会で3年連続県知事賞を受賞。果樹栽培農家から毎年、リンゴやナシ、イチゴの花粉交配を依頼されている。本間さんは「無添加のおいしい蜂蜜を多くの人に提供したい」と張り切っている。
元気な暮らしに役立つ
栄養のお話
NPO法人ヘルス・コミュニケーションズ
理事長
笠原 賀子
由来
蜂蜜は、ミツバチが草木の花蜜を集めて巣の中に蓄え、その間に唾液の酵素で熟成させ、羽ばたくことによって水分を20%前後まで飛ばした天然の濃縮糖液です。1匹の働き蜂が、一生かかって生成する蜂蜜の量は、ティースプーン1杯分。私たちは、その恩恵を受けているのです。
蜂蜜には、アカシア、アルファルファ、クリ、クローバー、シナ(リンデン)、ソバ、トチノキ、ナタネ、ハギ、ベニバナ、ミカン(オレンジ)、レンゲの蜜をはじめ、いろいろな花の蜜が混じった百花蜜など多種あります。花の種類によって、色、香り、風味やとろみ、成分などが異なります。なお、「王乳」と呼ばれるロイヤルゼリーは、蜂蜜とは別のものです。
栄養成分
人類最古の甘味料である蜂蜜特有の甘みは、果糖によるもので、砂糖よりも強い甘みがあります。しかも低エネルギー(砂糖の約75%)!とりすぎには注意が必要ですが、甘いもの好きには朗報です。
主成分は、これ以上分解されないブドウ糖と果糖(砂糖はこの二つが結合したもの)で、消化が早く、すぐにエネルギーに変わります。胃腸の弱い人や高齢者の栄養補給、速やかに疲労回復をしたいスポーツ後にお勧めです。その他、B1、B2、葉酸などのビタミン類、アミノ酸やポリフェノール、カルシウム、鉄などのミネラル類が含まれている栄養豊かな食品です。さらに、蜂蜜に含まれる有機酸やオリゴ糖などは、乳酸菌やビフィズス菌を増やし、腸内環境を整えて、便秘や下痢の改善にもつながります。
また、古来より、強力な殺菌効果があり、風邪や咳止め、喉のケアをはじめ、ニキビ予防や美肌などにも有効であると言われています。かのクレオパトラも、蜂蜜を愛用していたとか・・・。
蜂蜜は酸性のため、金属に触れると風味が変わってしまいます。木製のハニーディッパーやスプーンを使って蜂蜜本来の味を楽しみましょう。