運動で防ごう!
変形性膝関節症
善衆会病院長
木村 雅史さん
今年3月に県が発表した県民の2017年の平均寿命は、男性80.76歳、女性87.15歳で、ともに過去最高を更新。健康寿命も延ばして長寿を楽しみたいところだが、膝に痛みが伴う変形性膝関節症により、歩くことに障害のある高齢者が多い。膝関節外科などが専門の善衆会病院長の木村雅史さんは「適切な運動をすることで予防や進行を抑えることができる」と呼び掛ける。
加齢による筋力低下
変形性膝関節症の症状として、初期段階では、朝起きて膝を伸ばしたり、歩き始めなどの動作の開始時に、膝のこわばりや痛みが出ますが、すぐに治まります。徐々に進行すると、正座や階段の上り下りがつらくなり、痛みとともに膝の腫れや水がたまることもあります。さらに状態が悪化すると、痛みで歩行が困難になります。
変形性膝関節症は、軟骨がすり減ることで関節が変形してしまい、痛みが現れる病気です。40代後半になると、関節軟骨の老化や筋力の低下が進みます。全国で約2500万人の患者がおり、高齢化に伴い、年々増加しています。
加齢をはじめ、肥満や膝の使い過ぎ、炎症を起こす物質を出しやすい遺伝的な問題などさまざまな原因があります。半月板や靭帯の損傷など、けがによる二次的な発症はわずかです。男女比では2:1で女性が多いのが特徴で、閉経などによる女性ホルモンの影響も指摘されています。
太もも鍛えて予防を
特に加齢により筋力が落ちやすいのが、太もも前部にある筋肉の大腿四頭筋です。弱まることで太ももの内側に荷重がかかり、膝の内側の軟骨がすり減ってO脚になりやすくなります。一度すり減った軟骨は元に戻ることができません。
痛みを軽減させる薬がありますが、「運動より勝る薬なし」というように、鍛えることが一番重要です。痛いからといって安静にすることが一番悪い。かといって過度な運動は逆効果で、適度な運動が予防につながります。
運動療法でお勧めするのが、仰向けになり、膝を伸ばした状態で片脚を持ち上げる「脚上げ体操」です。反対側の膝は立てて行います。重要な太ももの筋肉強化に効果があります。10~20センチ脚を上げて5秒止め、下ろします(2秒間)。20~30回を1セット、左右1日3セットしてください。若い年代や慣れてきた方は、足首に1キロ程度の重りをつけて上下運動することで、より効果があります。
脚の上げ下げが難しい方は、膝下に丸めたタオルなどを入れて膝を下に押し付ける運動も効果的です。
◇運動療法(太ももの筋力強化)
脚上げ体操(20~30回×1日3セット)
- 方 法:仰向けで膝を伸ばした状態で脚を持ち上げる(5秒間)下ろす(2秒間)
- 注意点:反対側の膝を立てる
膝の押し付け(20回×1日3セット)
- 方 法:膝下に丸めたタオルなど入れて膝を下に押し付ける(5秒間)
- 注意点:膝と足先は真っすぐ天井に向ける
痛みない歩行実現へ
太ももの筋力のほか、お腹の筋力も弱まると骨盤が後傾して背中が丸くなり、O脚になりやすいので、腹筋など上半身の運動も必要です。
運動療法のほか、膝を温める温熱療法、外側が少し高くなった足底板を履いてO脚改善を目指す装具療法などがあります。
症状が悪化した場合は、変形を矯正する膝の骨切り術や、人工関節に置き換える人工膝関節置換術などの手術があります。あくまで最終手段であって、その前に日ごろの運動を心掛け、痛みなく歩行できるよう、健康寿命を延ばしましょう。