種類が豊富な トウモロコシ
食を支える 世界三大穀物

背丈を超えるほどに成長したトウモロコシ畑で収穫作業を行う岩田さん

夏の味覚として根強い人気を誇るトウモロコシ。食用や加工用のスイートコーンだけでも、ゴールドラッシュやピュアホワイトなど、人気の品種がたくさんある。粒が大きく、皮がやわらかくて甘みたっぷり。しかも、加熱してそのまま食べるのもよし、サラダに乗せたりスープにしたりと、食べ方もお好み次第で実に幅広い。ビタミンや食物繊維など栄養素が豊富なのもうれしい。

浅間山麓の標高1000mの高原に広がるトウモロコシ畑。この辺りは、戦後入植した人々により開拓が行われ、酪農と野菜栽培が盛んな土地である。

戦後開拓の3代目、岩田さんは、従業員5人と、住込みのアルバイト6~8人の力を借りて、数十品目の野菜を栽培している。18haの農園には、キャベツや白菜、レタス、大根、トマトなど、トウモロコシもその一つで、毎年1.5haに8~9万本の苗を育てている。

粒がすべて黄色のジューシーな「ゴールドラッシュ」

人の背丈を超える高さにまで育ったトウモロコシから収穫する実は原則1本。有機肥料を使い無農薬で栽培している。今年は生育期に雨の日が多かったせいか、例年に比べ不作だという。

収穫は8月上旬から9月中旬まで。トウモロコシは寒暖の差により甘さが出るので、もっとも甘いとされる早朝に集中して収穫作業をしている。「味と品質には自信を持っています」と岩田さんは胸を張る。

ジューシーな大粒の実

岩田さんが就農したのは22歳のとき。高校や農業大学校で実践的な農業を学び、即戦力として父を手伝うようになった。

酪農は祖父がこの地に入植して以後、岩田さんが中学生のころまで続き、その後は野菜と肉牛の肥育を行っていたが、東日本大震災を機に、野菜の生産農家へと全面転換した。

栽培しているトウモロコシの品種は「ゴールドラッシュ」。粒の色がすべて黄色い「イエロー種」で、風に強く実入りが安定している。大粒の実はジューシーで、プチプチとした食感が人気の品種だ。

「糖度は17~18度にもなります」と岩田さん。果物並みの高さだ。ただし、トウモロコシは新鮮さがいのち。収穫後は時間の経過とともに糖分が失われていくので、少しでも採れたてに近い味を消費者に届けるため、早ければ翌日に手元に届くよう、収穫後すぐに出荷している。

県の支援で6次産業化

「北軽井沢のトウモロコシを、もっとたくさんの人に食べて知ってもらいたい」。そんな気持ちから、トウモロコシを活用した商品開発の取り組みが、妻の望さん(39)を中心に昨年スタートした。考案したのは原材料がトウモロコシだけの「ピューレ」で、目指しているのは「採れたてのトウモロコシを丸かじりしたような味」

昨年度、県の実施する「群馬県6次産業化チャレンジ支援事業」に採択され、補助金を活用して自宅加工場を整備、商品化を進めている。「6次産業化を通じて北軽井沢の美味しい野菜をPRして行きたい」と望さん。来年には商品化して販売する予定だ。

*制作協力/群馬県農政部

元気な暮らしに 役立つ 栄養のお話
高崎健康福祉大学健康福祉学部
健康栄養学科講師
熊倉 慧

由来

トウモロコシは、とうきびとも呼ばれるアメリカ大陸原産のイネ科の一年草です。日本ではスイートコーンに代表されるように未成熟の状態で食され、野菜としても認識されていますが、コメ、コムギと共に世界三大穀物として人類の食を支える重要な作物です。トウモロコシの祖先は、メキシコなどに自生するテオシントと呼ばれる植物であることが知られています。メキシコのテワカン谷の洞窟からは、年代によって長さの異なるトウモロコシの穂軸(すいじく)が発見されています。穂軸の長さは後年代になるに従い、長くなっており、年月をかけて改良されてきたことがわかります。トウモロコシは15世紀から16世紀にヨーロッパに広まり、日本にもこの頃にヨーロッパ人により伝来しています。

種類

トウモロコシには、さまざまな種類があります。スイートコーン(甘味種)は、生食用や加工用に利用されます。デントコーン(馬歯種)は、穀物として家畜飼料や工業原料にも用いられています。フリントコーン(硬粒種)は、硬いでんぷんが蓄積され、食用として利用されます。ポップコーン(爆裂種)は、フリントコーンに近く、加熱することではじける種類です。そのほか、大部分が軟質でんぷんからなるソフトコーンやアミロペクチンが多く餅のように加工できるワキシーコーンなどの種類があります。

栄養成分

スイートコーンには、リノール酸、α-リノレン酸などの必須脂肪酸が多く含まれます。必須脂肪酸は、人間の体内では合成されず食物から摂取しなければなりません。リノール酸には、LDL(悪玉)コレステロールを正常値に下げる働きがあり、動脈硬化や高血圧を予防すると言われています。しかし、食べすぎるとHDL(善玉)コレステロールも下げてしまい、アレルギー疾患の悪化や免疫力の低下を引き起こすことがあるので、バランスよく摂取することが大切です。そのほか、胚芽や皮の部分にはエネルギー代謝を助けるビタミンB1やパントテン酸、便秘解消などに効果のある、食物繊維などが多く含まれています。また、トウモロコシのひげにも食物繊維やカリウムなどが含まれており、利尿効果などが期待できます。

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