乳がん検診 必ず受診を

お医者様
渋川医療センター乳腺内分泌外科 横江 隆夫さん

10月は「乳がん月間」。生存率は改善されているものの、最近でも、衆院議員や漫画家が乳がんで亡くなったことが報じられた。がんのうち、女性が最も多く罹患(りかん)するのが乳がん。女性の10~11人に一人が発症し、その数は年々増加している。渋川医療センター乳腺内分泌外科の横江隆夫さんは「発見が遅れると命の危険がある。早期発見、早期治療が重要」と訴える。

生活習慣の見直し

乳がんは、乳房にある乳腺にできるがんです。そのうち、母乳を運ぶ「乳管」の表面を覆っている上皮細胞にできる乳管がんが9割を占めます。年間の罹患者は約76,000人(2014年)で、40代後半が最も多く、各年代ともに増加傾向です。5年生存率は92%を超え、ほかのがんと比べて高いですが、早期発見が肝心です。

増加理由として、食事や生活の欧米化が関係しています。みそ汁や豆腐、納豆など大豆イソフラボンを多く含む食事を取ることで、リスクは低下します。遺伝性は5~10%と少なく、飲酒や喫煙、閉経後の肥満、運動不足などが原因となるため、生活習慣を見直すことで予防につながります。

初潮が早く、閉経が遅い、出産や授乳経験がない女性が増えていることにも起因しています。排卵により、卵巣から分泌される黄体(おうたい)ホルモンと卵胞(らんほう)ホルモンの量が同時に上がることで、乳管の上皮細胞が刺激を受け、がん化する可能性があります。つまり、生涯の生理の回数が多いと、刺激を受ける回数が増えるため、リスクが高まるのです。

男性罹患数は女性の100分の1と少ないですが、進行が速く、リンパ節や他臓器転移の可能性が高く、注意が必要です。50代後半に多く、肝機能の低下などで胸が腫れる「女性化乳房症」の人がなりやすいです。

遺伝子変異は高確率

範囲が広いと乳房切除、小さければ温存手術(部分切除)を行います。乳房の再建手術では、背中やお腹から採取した組織を移植する方法がありますが、傷跡が残るため、人工乳房が一般的になりました。しかし、今年、再建した人工乳房の影響とみられる死亡事例が報告され、中断しています。

アメリカの女優、アンジェリーナ・ジョリーさんは、乳がん予防のため乳房切除を行いました。日本では現在、予防的切除は公的医療保険が認められていませんが、BRCA1というがん抑制遺伝子に変異のある患者さんは、高確率で乳がんになるため、保険適用が検討されています。

自分で異常の確認も

早期発見するためには、自己検診を行い、乳房の変化や異常にいち早く気付くことが重要です。がんの可能性のあるしこりの確認方法として、①仰向けに寝て乳房に手を当てて探す②鏡の前で、両腕を上げた時に乳房にえくぼのようなへこみがないか調べる─などがあります。そのほか、乳頭の陥凹(かんおう)や片側の乳頭の先から血が混ざった分泌物、皮膚の赤みなどが現れたら、乳腺内分泌外科か外科を受診してください。

乳房内でがんが増殖して石灰化した場合は、触診では確認できず、マンモグラフィーでないと分かりません。超音波検査も精度が良くなっています。また、トモシンセシスという高解像度の断面画像が見られる最新技術も出てきました。2年に1度、必ず乳がん検診を受けてください。

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