継続治療で 糖尿病克服を

お医者様
群馬大医学部附属病院 内分泌糖尿病内科 山田 正信さん

あす14日は世界糖尿病デー。前橋市の臨江閣や草津温泉の湯畑などで、県糖尿病協会が国連の旗を意味するブルーを加えたライトアップを行い、啓発活動を展開する。自覚症状が少なく、進行すると深刻な合併症を引き起こす可能性が高い糖尿病。群馬大医学部附属病院内分泌糖尿病内科の山田正信さんは「健康診断で早期発見し、継続した治療が重要」と呼び掛ける。

合併症で障害も

血液中のブドウ糖(血糖)の濃度が高い状態が続く糖尿病は、膵臓すいぞうから出る血糖を一定に保つ「インスリン」の分泌低下や効き目が悪くなることで発症します。群馬県の「県民健康・栄養調査(2016年)」によると、糖尿病の強い疑い、可能性が否定できない20歳以上の県民は5.5人に1人と2割近くに及びます。高齢化に伴い年々増加しており、誰しも発症し得る身近な病気です。

糖尿病には大きく1型と2型があります。1型は、自己免疫疾患などにより、インスリンがほとんど出なくなります。9割以上は2型で、インスリンの分泌不足や効き目が発揮できなくなります。食事や運動不足など環境要因が大きいとされています。

血糖値が高い状態で進行すると、3大合併症(細小血管障害)が伴うリスクが高まります。患者の多い順に、①足の切断の可能性もある「糖尿病性神経障害」②失明につながる「糖尿病性網膜症」③腎機能低下による人工透析の原因となる「糖尿病性腎症」で、慢性的な障害が現れます。さらに、脳卒中や心筋梗塞などの大血管障害を引き起こすこともあります。急な極度のインスリン欠乏などで、著しい高血糖や脱水などが起こる急性合併症は、命の危険があり、一刻も早い治療が必要です。

選択肢増える治療

健康診断で、血糖や尿糖に異常があれば、すぐに受診してください。かかりつけ医や糖尿病療養指導士、保健師との連携を強化し、受診勧奨や指導を進めています。

インスリンの分泌を促進させる働きのある、腸から出るGLP-1というホルモンを活性化させる「DDP4阻害薬」や「GLP-1製剤」の治療がありますが、最近、急激に使用が増えているのが「SGLT2阻害薬」です。体内の糖を尿から排出して血糖値を下げるだけでなく、腎臓や心臓への良い効果も報告されています。脱水などにより、脳梗塞などを引き起こす可能性もあるため、専門医を受診してください。

自動的にインスリンを体内に注入する携帯用のインスリンポンプも普及し始め、血糖値が測れるものもあります。医療の進歩で、治療法の選択肢が増えてきています。

糖尿病の判定基準

効果的な食事や運動

初期であれば、食事や運動療法で正常値に戻る人もいます。食事療法では、炭水化物やタンパク質、脂肪やビタミン・ミネラルを偏らないように摂取すること。運動療法では、30分程度のウオーキング(有酸素運動)のほか、最近ではダンベルなどを使ったレジスタンス運動も効果的だと言われています。加齢で筋力低下する「サルコペニア」や肥満の解消にもつながります。

初期段階では、症状や痛みが出ないため、治療を途中でやめてしまう人がいますが、絶対に中断しないでください。決して諦めずに治療を続け、克服していきましょう。

食事療法・運動療法
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