インフルエンザ
感染防ごう
前橋赤十字病院
感染管理室長
林 俊誠さん
11月中旬、厚生労働省は、例年より1カ月ほど早く、今季のインフルエンザの全国的な流行が始まったと発表した。本県では、異例となる8月末に前橋市内の複数の幼稚園児の感染が発覚。10月には同市内の中学校でも学級閉鎖があり、インフルエンザが猛威を振るい始めている。前橋赤十字病院感染管理室長の林俊誠さんは「しっかりと予防し、感染拡大を防ごう」と呼び掛けている。
集団生活は要注意
インフルエンザは、A型またはB型インフルエンザウイルスによって、3月までの主に冬季に流行する病気です。風邪では、数日かけて喉の痛みや鼻水、咳などの自覚症状が出ますが、インフルエンザは、こうした症状が比較的急に現れるほか、高熱や関節痛、筋肉痛が強く感じられます。
昨シーズンは、国内で約1200万人が受診したと推計され、ここ数年は1000万人から1500万人の間で推移しています。
国内ではA型が主流ですが、終盤にB型が流行することもあります。A型とB型に症状の差はないと言われています。A型に感染してもB型に感染する可能性があるため、継続的な注意が必要です。
咳やくしゃみに含まれるウイルスの飛沫を浴びたり、吸い込んだりして気道の粘膜に付くことで感染します。咳やくしゃみを押さえた手、鼻水をかんだ手で触れたところは乾燥するまでウイルスで汚染されています。症状が出る前に感染する特徴もあるため、防ぐことがとても難しいです。
幼稚園や学校、介護施設などの集団生活をしている子どもや高齢者は、ウイルスをもらいやすい環境にあります。心臓や腎臓、肝臓などの臓器に持病がある人も免疫力の低下で感染しやすいです。
3種の有効な予防策
予防法は、主に3種類あります。まず1つ目は「予防接種」です。「絶対にかからない」ではなく、「確率が減らせる」というもので、感染しても重症化を防げるメリットがあります。
2つ目は「マスク着用」です。飛沫は2メートル先まで飛ぶため、人混みや近距離で会話をする場合は必須です。マスクから鼻が見える、何日も使い続けるなどは予防効果がありません。外面はウイルスで汚れているので、耳掛け部分のみを触り外して捨てましょう。
3つ目は「手をきれいにする」。せっけんでの手洗いでも構いませんが、携帯型のアルコール手指消毒液があれば、場所を選ばずに清潔にできます。手洗い前に鼻を不用意に触らないというのも有効な予防策です。
1週間超発熱は受診を
治療法としては、ウイルスの増殖を抑制する抗インフルエンザウイルス薬と、発熱や痛みを和らげる対症療法があります。
抗インフルエンザウイルス薬は、解熱が1日前後短くなるとされています。重症度によって効果が異なるため、過度な期待はできませんが、幼児や妊婦、高齢者や持病を持つ人には有効です。
抗インフルエンザウイルス薬の使用の有無に関わらず異常行動が報告されています。高所からの転落事故などは就学以降の小児や未成年の男性に多く、発熱から2日以内に発生していることが分かっています。1階や窓のない部屋で寝かせる、一人にさせないなど心掛けてください。
通常、1週間程度で回復しますが、まれに重症化して肺炎や脳症を引き起こし、命に関わることもあります。1週間を超えても発熱が続く場合は、合併症の可能性もあるので必ず再受診してください。