利用者に合った
「手足」作る
義肢装具士
中條 美里さん
病気やけがにより手や足を失った人が装着する義手や義足。手や足、腰や首などに痛み、まひなどが生じた時に装着する装具。義手や義足、装具を製作し、使う人に合うよう調整するのが義肢装具士の役割。県立義肢製作所(前橋市新前橋町)の中條美里さん(26)は使う人の要望に耳を傾け、コミュニケーションを図りながらミリ単位の調整に挑んでいる。
好きなものづくり生かす
大工だった祖父の影響で幼いころから図工やものづくりが好きだった。六つ下の妹が足底板を必要としていて型取りを目にすることもあり義肢装具士という仕事を身近に感じていた。介護の資格取得を目指して勉強していた高校1年生の時、父が脳梗塞で倒れ、福祉の中でも、ものづくりの義肢装具士を目指すことにした。高校卒業後、都内の専門学校に通い国家資格を取得。臨床実習で訪れた県立義肢製作所に就職した。
要望くみ取り微調整
製作所を訪れる利用者は新たに義肢装具を作る人や作り直す人、体重の増減や加齢による体の変化で義肢装具が合わなくなり調整を要する人、長期にわたる使用で破損し修理を要する人などさまざま。補装具製作は、利用者の相談に乗り、要望を形にする。石こうで採型(型取り)を行い、樹脂製の部品、金属製の継手(関節)などを組み合わせて作る。製作にはさまざまな道具や工具を使いこなすことが求められる。足や手を入れる部分(ソケット)のフィット感は、特に使用する上で重要。
「ものづくりの知識や技術はもちろん必要だが、それよりも重要なのはコミュニケーション能力。どういったものを求めているのか、どの部分に不具合があるのか。それをくみ取る能力が求められる」。
長く寄り添える関係に
同製作所は他の民間義肢製作所に比べ修理や調整の相談が多い。高齢となり筋力が衰えることで、今まで使用していた義肢も数ミリ単位で調整する必要が出てくる。「どの部分に違和感があるのか、言葉でうまく表現できない場合もある。利用者と話し合いながら改善すべき場所を探り当てる。試行錯誤の連続」。原因が見つけられず先輩にアドバイスを求めたときもあるが、利用者とのコミュニケーションの中で解決できた時はやりがいを感じる。
義肢装具士となり4年目。利用者から指名を受けて調整に当たることも増えた。特に同性の女性から指名されることが多いという。「まだまだ、利用者に学ばせてもらっている時期。利用者に満足してもらい、ずっと頼りにされる存在になりたい」。義肢装具製作で出会った利用者に寄り添い、義肢装具同様に長く付き合える間柄になるのが目標だ。