正確な検査で
診断助ける
臨床検査技師
上杉 弘尚さん
医師が診断や治療を行う際に、検査結果は欠かすことのできない判断材料になる。臨床検査技師は尿や血液、細胞などの「検体検査」と、心電図や超音波などの「生理機能検査」を専門に行い、病気の診断や早期発見の手助けをする縁の下の力持ちだ。渋川医療センター(渋川市白井)の上杉弘尚さん(35)は、幅広い検査業務の中の検体検査を担当。じっと検査結果を待つ患者のために、正確なデータをできるだけ早く医師に届けるよう黙々と仕事に取り組んでいる。
大学での勉強生かす
埼玉県の高校を卒業後、大学の理工学部数学科に進学。教員免許を取ったが、大学で学んだ統計学や数学が生かせる臨床検査技師に興味が湧き、養成専門学校のオープンキャンパスを訪ねた。そこで専門学校の教師になっていた数学科ОBに偶然出会い、「縁を感じて」入学。3年間学んだ後、国立病院機構水戸医療センターに就職した。渋川医療センターの開院に伴う転勤で群馬に来て4年目になる。
より良い医療体制を
採血した血液や尿の成分分析や顕微鏡による細胞の観察、血液製剤が輸血として使えるかどうかの確認が基本業務。新薬の効果を数年掛けて検定する治験検体の管理にも携わる。検査機器が常に一定の状態で安全に使えるように維持・管理し、電子カルテと検査科のシステムの連携状況を確認・修正することも大切な役目の一つだ。
専門分野を深めるために数年前から勉強し、3年前に「認定輸血検査技師」の資格を取った。院内で定期的に開かれる輸血療法委員会の一員として、輸血関連の運用や体制について議題のデータや資料を作成。医師や看護師などの多職種で話し合い、必要があれば輸血療法マニュアルを改訂し、より安全で的確な体制づくりの一翼も担っている。
数値の変化を見て
一日に扱う検体は数百件を軽く超える。スピードと正確な結果の両立が求められる仕事だ。患者と接する機会はほとんどないが、「不安な気持ちで結果を待つ一人一人の患者さんの人生に関わること」という緊張感をもって臨んでいる。何百何千の細胞の中のたった一つの細胞の違いを見過ごさずに「気づく一瞬」や「気づける目」を養うことの重要性を常に意識するように心掛ける。入職1年目は頼まれた血液標本の結果を伝えた医師が再度、標本を確認に来た。その後は「任せたよ」と言われ、信頼に応えられるように「もっと頑張ろう」と思ってきた。
「検査で分かることはたくさんあります。健診で引っ掛かることが早期発見のきっかけになり、大事に至らないことが多々あります。休みづらいとは思いますが、定期的な検査で数値の変化を時系列で確かめることは、病気予防のためにも非常に大切です」