心筋梗塞
生活習慣で予防を
群馬大医学部附属病院
循環器内科
倉林 正彦さん
日本人の死亡原因は、がんに次いで心疾患が2番目に多い。心臓の筋肉(心筋)に血液を送る冠動脈が詰まることで発症する心筋梗塞は、命の危険が伴う病気だ。寒さが厳しさを増すこの時期、急激な寒暖差による「ヒートショック」が原因で発症することもある。群馬大医学部附属病院循環器内科教授の倉林正彦さんは「生活習慣を見直すことで大きな予防効果がある」と指摘する。
胸部以外の症状も
心筋に酸素や栄養を含んだ血液を送る冠動脈に血栓(血液の塊)ができ、血管が閉塞することで心筋が壊死する病気のことを「心筋梗塞」と言います。
国立循環器病研究センターによると、高齢化に伴い全国の患者数は2013年度6万9千人、17年度7万3千人と増加傾向です。
初期症状では、胸部全体の圧迫感や締め付けられている感じがします。顎や肩甲骨周辺の痛み、みぞおちなど上腹部の膨満感など胸部以外で症状が現れ、診療科を誤ることもあるので注意が必要です。ジョギングなど体を動かした後のほか、明け方や安静時でも症状が出ることがあり、早期対応が重要です。
動脈硬化でリスク増
4大危険因子の糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙のほか、肥満や冠動脈疾患の家族歴、加齢(男性45歳以上、女性55歳以上)によって動脈硬化が進行し、心筋梗塞を発症するリスクが高まります。
血液中のLDL(悪玉)コレステロールが血管壁にしみ込み、プラークという溜まりができます。血管の内皮細胞の働きが落ちると、LDLがしみ込みやすく、LDLを捕食するマクロファージの働きが活発になり、動脈硬化が起こります。突然プラークが破裂し、急激に血管が閉塞するケースが心筋梗塞の8割以上です。また、患者さんの4割程度は、前段階で冠動脈が細くなり発症する狭心症を引き起こしています。
心筋梗塞の発症から90分以内の治療がその後の心不全リスクを抑えます。血管内に網目状の金属ステントを置く手術が有効です。LDLコレステロールを下げる薬はマクロファージの働きを抑制し、非常に効果的です。
冬場の寒暖差に注意
早期発見は難しく、危険因子がある人はリスクが高いと考え、少しでも異常を感じたら血液検査や心電図検査を受けてください。冠動脈のCT検査も外来で行える検査です。
日ごろの生活習慣の改善も重要です。食事療法で中性脂肪(TG)を下げ、運動療法でHDL(善玉)コレステロールを高めることで、動脈硬化の予防につながります。糖質や脂質、アルコールを控え、魚や野菜、キノコなどの食事が良いとされ、ジョギングなど有酸素運動が効果的と言われています。
心筋梗塞の発症は、冬場に多い傾向があります。外出が減りTGが上がりやすくなるほか、感冒やインフルエンザによる炎症で動脈硬化が進行しやすくなります。
また、風呂場や脱衣所など寒暖差によるヒートショックには、十分な注意が必要です。血圧の急激な変動や血流の悪化で、血栓ができやすくなります。長湯による脱水症状も危険です。脱衣所を暖めたり、水分補給したりと十分な対策を取ってください。