意思伝達の お手伝い

言語聴覚士 真塩 智子さん

脳の疾患による失語症や、うまく発音できなくなる構音障害などコミュニケーションに問題が生じた患者に、自分らしい生活を取り戻すための支援をする言語聴覚士(ST)。子どもの言葉の遅れや聴覚障害、嚥下えんげ障害にも対応する専門職だ。老年病研究所附属病院(前橋市大友町)で働く真塩智子さん(34)は、意思が伝わらずもどかしい思いをしている患者に寄り添い、それぞれに合ったコミュニケーションの方法を探る。

電気医療機器を用いて筋力の強化を図る

障害の原因を明らかに

失語症は言葉の理解が難しくなったり、犬を見て「ねこ」と言うなど、思っている事と違う言葉が出る症状。一方、構音障害や嚥下障害は、口や喉の筋肉のまひが関係する。STは個々の障害の発生原因や対応策を解明するため、聞こえや文字の認知などの検査を実施。結果に基づき、医師や理学療法士、作業療法士らの医療スタッフと連携しながら、筋力強化や言葉の概念の再構築を目指したリハビリメニューを組み立てていく。

伝えたい気持ちに応える

日々接する中で、「患者さんはすごい」と感じる。最初は笑うこともできず、人と会うことを拒絶する患者もいる。意思も示せない中で、検査はとても大変。リハビリには根気が必要だ。「突然話せなくなり、言いたいことが伝わらない。それだけでも辛いのに、私たちの働き掛けに応じてくれる。元に戻りたい、という気持ちに応えたい」。入院当初、ほとんど話せなかった患者が、産休に入る直前の真塩さんに「元気に頑張ってね」と声を掛けてくれた例もある。「本当はみんな、伝えたいことがたくさんある。それを引き出すお手伝いが私たちの仕事、と実感した」。

人の可能性を伸ばす

STを志したのは、高校生の時に自閉症の子どもたちと触れ合い、周囲との関わりが難しい人とのコミュニケーションの方法を考えたことがきっかけ。その思いは今も変わらない。「気持ちが伝われば、本人も家族も笑顔になる。それが一番うれしい」。家族へのアドバイスだけでなく、復職が可能な場合、職場へ情報提供し、協力を呼び掛けたりすることも。「脳が大きく関係するので、研究も日進月歩な分野だけれど、人の持つ力の可能性も感じる。今後も患者さんとの関わりの中で勉強を続け、きめ細かいフォローができれば」と意気込む。

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