栄養豊富な牛乳
身体を元気にする
自然環境に恵まれた本県は酪農が盛んで、乳牛の飼養頭数は全国5位の3万4000頭(2019年)、生乳の生産量は年間21万6000t(2018年)と全国4位を誇る。搾乳された新鮮な生乳は、牛乳をはじめバター、チーズなどに加工されて店頭に並ぶ。牛乳は良質なたんぱく質やカルシウム、ビタミンなどの栄養素を豊富に含んでいる。ぜひ毎日飲んで、健康づくりに役立ててほしい。
田園風景が広がる武尊山麓の川場村に、全国でもトップクラスの人気を誇る道の駅「川場田園プラザ」がある。そこから傾斜地を数百m上った所に、川田さんが経営する牧場がある。
大きな牛舎2棟で飼養している乳牛は、産乳量が多いホルスタイン110頭と、日本では珍しいブラウンスイス5頭の計115頭。1日に3tの生乳を出荷している。
搾乳は朝と夕方の2回、それぞれ2時間かけて行っている。搾乳そのものは搾乳機で行っているが、「準備や後片付けは手作業なので大変です」と川田さん。特に搾乳時は乳房炎になりやすいので、清潔に搾乳するため、細心の注意を払っている。
良質な生乳生産に全力
川田さんが家業の酪農を継いだのは24歳の時。北海道の酪農学園大学を卒業後、1年間のサラリーマン生活を経て就農。父親とともに牛舎の改良や効率的な搾乳方式を導入し、近代化を進めることで、乳牛の飼養頭数は25年前の3倍に増えた。
動物の飼養は地道な作業が多い。乳牛の場合も餌の配合や給餌はもちろん、牧舎の清掃、寝床づくり、寒さや暑さ対策など、やるべきことはたくさんある。「従業員と研修生2人に助けられています」と川田さん。「良質な生乳生産には、牛にストレスを与えないようにするのが一番です」と話す。常に牛舎や牛の体を清潔に保ち、体調のチェックや餌の食べ具合などの観察を怠らない。
酪農に加えて、コメと飼料用トウモロコシを栽培している。春の種まき時期と秋の収穫期は目が回る忙しさだが、「とてもやりがいがあります」と前向きだ。
ジェラートを製造・販売
3年前、株式会社川田牧場ファクトリーを設立し、ジェラート製造・販売に乗り出した。「自慢の生乳を使って製品を作りたかった」と川田さん。「子どもからお年寄りまで食べられるものを」と考え、ジェラートを選んだ。
事業の立ち上げはA‐FIVE(農林漁業成長産業化支援機構)のファンドを利用。東和銀行がこの制度の窓口になり、6次産業化を後押ししてくれた。川田さんは「川場田園プラザ」の目と鼻の先に店舗兼工房を構えた。運営は妻の真紀子さん(50)を中心に4人のパートと行っている。
地元産のリンゴやブルーベリー、イチゴなど旬の味覚を採り入れた商品のレパートリーは20種類、常時6種類が店頭に並び、売れ行きも好調。春から秋までは店舗、冬はスキー場で販売している。「低温殺菌のおいしい牛乳をベースにしたジェラートをぜひ味わってほしい」と、川田さんは呼び掛けている。
元気な暮らしに
役立つ
栄養のお話
高崎健康福祉大学健康福祉部
健康栄養学科講師
熊倉 慧
由来
人類は酪農を開始し、牛やヤギの乳を貴重な栄養源として利用してきました。牛乳からはチーズやヨーグルトなど私たちの食生活を豊かにしてくれる食品がつくられます。今回は家庭用冷蔵庫のレギュラー選手である牛乳についてお話しします。
良質たんぱく
牛乳のたんぱく質は、体の成長に必要なアミノ酸をバランスよく含んでいます。牛乳のたんぱく質は、大きくカゼインとホエイ(乳清)たんぱく質に分けられます。たんぱく質の約80%はカゼインで、消化管内での分解で生じるカゼインホスホペプチドは、カルシウムや鉄の体内への吸収率を高めることが知られています。ホエイたんぱく質であるβ-ラクトグロブリンには、筋肉をつくるために重要な分岐鎖アミノ酸が多く含まれ、ラクトフェリンには、ビフィズス菌増殖作用や免疫調節作用などさまざまな作用が報告されています。
腸内環境
牛乳に含まれる糖質の99.8%は乳糖(ラクトース)と呼ばれる糖質です。乳糖には乳酸菌やビフィズス菌の生育を促進し、悪玉菌の生育を妨げ、腸内環境を整える働きがあります。乳糖は小腸上皮にある乳糖分解酵素(ラクターゼ)の作用を受けて、ガラクトースとグルコースに分解され、吸収されます。日本人の多くはこのラクターゼの働きが弱く、おなかの調子が悪くなることがあります。この症状は乳糖不耐症と呼ばれています。
ミネラル・
ビタミン
牛乳のミネラルと聞いて、一番に思い浮かべるのはやはりカルシウムでしょう。牛乳中のカルシウムはカゼインとカゼインミセルという構造をとっており、吸収されやすいという特徴があります。また、ナトリウム量に対してカリウム量が多いという特徴もあります。微量ミネラルではヨウ素、セレン、モリブデンが比較的多く含まれており、成長促進や代謝を助ける作用があります。ビタミンAやB2には皮膚や粘膜を正常に保つ働きがあり、感染症予防の効果も期待できます。しかし、微量ミネラルやビタミンは、牛の飼料に由来するものもあり、飼料の影響を受けて含有量が変動することも知られています。