い び き

睡眠時無呼吸 症候群で 合併症

群馬大大学院医学系研究科
医学教育センター(前橋市)
鎌田 英男さん

人間の体は多くの細胞から成り立っています。これら細胞が良好な健康状態を保つためには、栄養、運動、休養(睡眠)を十分取ることが必要で、バランスも取れていることが重要です。休養は、受動的な消極的休養と能動的な積極的休養があり、消極的休養には、安静状態と睡眠による疲労回復が重要です。ヒトは朝起きて活動し、夜に眠りにつく生活を繰り返し、一生の3分の1は眠って過ごしています。人間が毎日生活し活動するために、睡眠は重要な役割を持っています。

現代社会では、夜間活動するヒトが増加しており、活動と睡眠の生体リズムの変化で、いびきや睡眠障害が増加しているとも言われています。欧米では人口の約19%、日本では約14%という報告があります。

いびきは呼吸障害の良いパラメーターです。習慣性のいびきは睡眠時無呼吸障害をもつことが多く、わが国で日中眠気を伴う睡眠時無呼吸症候群の割合は成人の男性で4%、女性で2%と言われ、約300万人以上いるとされています。睡眠時無呼吸症候群は、高血圧、糖尿病、脳血管疾患、心疾患、認知症などを高頻度に合併すると言われ(図1)、生命予後にも大きな影響を与えます。

図1 睡眠時無呼吸症候群と生活習慣病の合併率

いびきの音は、口蓋垂こうがいすい前後での呼吸道が肥満、口蓋扁桃へんとう肥大や睡眠時の筋緊張低下で狭くなり、通過する気流により発生します(図2)。小児の原因には、アデノイド増殖症や口蓋扁桃肥大が多く認められ、夜尿症、漏斗胸ろうときょうや胸郭変形をきたすこともあります。

図2 鼻から咽頭喉頭の図

日本人は欧米のヒトと比較して、下顎の骨の開きが小さく後退しているヒトが多く、いびき発生が多いと言われています。また、鼻腔が狭くなる慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎、鼻中隔彎曲びちゅうかくわんきょく症などでは、鼻からの呼吸ができず口呼吸となり、舌根ぜっこんが沈下して、いびき音が大きくなります。10秒以上続く無呼吸が1時間に1回以上起こる方は、専門医に相談してください。

協力/群馬県医師会
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