まずは相談 若年性認知症

お医者様
老年病研究所 認知症研究センター長 東海林 幹夫さん

認知症は、脳の病気によって認知機能が重く障害を受けた状態で、65歳未満で発症した場合、「若年性認知症」と定義している。患者自身が発言する場も増え、認知されてきているが、働き盛り、子育て世代のため、介護や経済的負担が重くのしかかる問題もはらむ。老年病研究所認知症研究センター長の東海林幹夫さんは「早期治療をするために、重く考えず気楽に相談してほしい」と呼び掛ける。

四つの原因疾患

認知症は、記憶障害や論理的な判断力の低下、段取りがうまくできないなど日常生活や仕事に支障が出ます。認知症の患者は全国で約600万人、そのうち約4万人が若年性認知症(以下、若年性)です。若年性は男性に多く、平均的に50代後半、まれに40代から発症する方もいます。

認知症は、主に四つの原因で発症します。原因疾患により、進行や治療法も異なります。若年性の半数近くを占めるのが、記憶障害から始まる「アルツハイマー病」です。発症までに25年、もの忘れなど軽度認知障害の5年間を経て、10年掛けて進行します。

次に多いのが「血管性認知症」で3割を超えます。脳梗塞など脳卒中の後遺症として引き起こされます。高齢者での割合は1割程度ですが、若年性における割合は高く、原因となる脳卒中のほか、高血圧や糖尿病は、生活習慣を改善することで予防につながります。少数ですが、「前頭側頭型認知症」は、失語や判断力が低下し、進行が早い。「レビー小体型認知症」は、人がのぞいているなどの幻視が現れます。アルツハイマー病やレビー小体型認知症は、進行を遅らせる、幻視を改善する薬があります。

経済的負担大きく

若年性は現役世代のため、家庭生活だけでなく、仕事でのトラブルが目立つようになります。うつ病と症状が似ているため、原因が特定できず、若年性の患者が認知症の専門医にたどり着くまでに平均1年かかると言われています。会社や家庭での責任や子どもの進学費用など社会的、経済的な負担が大きくなる世代のため、家族と共に精神的に追い詰められることも多いです。

少しでも異変を感じたら、物忘れ外来を受診してください。長谷川式簡易知能評価スケールなどのテストで認知機能をチェックします。早期介入で治療や介護計画が立てられ、家族の負担を減らせます。

生活習慣の見直しを

認知機能低下の予防として、食事では魚や野菜の摂取、運動では週3回、30分の早歩きが効果的です。健康診断は必ず受け、生活習慣を見直してください。

県は「若年性認知症コーディネーター」を県内病院に委託し、就労や自立支援、専門医の紹介などをしています。本人や家族の相談窓口もあるので利用してください。若年性は、40歳から介護保険の適用や自立支援など公的支援を受けることができます。

アルツハイマー病の根本的な治療薬の開発が進んでいます。ほかの原因疾患についても、治療法の研究が行われています。徐々に認知症は治る時代に突入し始めています。悲観せずに早期の治療を心掛けてください。

長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)
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