生活見直そう
ストレートネック
慶友整形外科病院
慶友脊椎センター長
河野 仁さん
最近「スマホ首」とも言われる「ストレートネック」は、スマートフォンの使い過ぎや長時間のパソコン操作が原因とされる。本来緩やかに前方にアーチを描く頚椎(首の骨)が、真っすぐな状態になることで首回りの筋肉の負担が増え、慢性的な肩こりや首の痛みの症状が現れる。慶友整形外科病院慶友脊椎センター長の河野仁さんは「運動をして筋力をつけ、生活習慣を見直して予防に努めてほしい」と呼び掛ける。
頭支える首に負担
ストレートネックは、正式な病名ではなく、医学的な定義では「頚椎の配列が理想的な前弯(前方に弯曲)から逸脱した状態」のことを言い、本来の頚椎の前弯が減少、もしくは消失した状態を指します。
直立した時に、頚椎の前弯で重心の真上にくるはずの頭部が、頚椎の並びが真っすぐになることで、重心より頭部が前方に出てしまいます。そのため、頭部の重さを支えるのが首の筋肉だけとなって負担が大きくなり、肩こりや首の痛み、後頭部の頭痛などの症状が現れます。また、倦怠感など自律神経にも影響が出る可能性も指摘されています。男性にはほとんど見られませんが、筋力が少ない特に20、30代の女性が頚椎の前弯が少ない傾向になっています。
生活習慣の影響大
人間の身体は脊椎で支えられています。脊椎の中で頭を支える頚椎は前弯、背中部分の胸椎は後弯(後方に弯曲)、上半身を支える腰椎は前弯し、S字を描いてさまざまな動作の力を分散して負担を軽減しています。
こうした脊椎の配列は後天的に獲得します。お腹の中で赤ちゃんは首から腰まで丸くなっています。首が座ることで頚椎の前弯ができ始め、ハイハイをすることで腰の前弯ができ、歩けるようになっていきます。
ストレートネックは、スマートフォンやパソコン、ゲームなど首を下に傾けた姿勢を取り続ける生活習慣の影響が大きいだろうと言われています。正式なデータはありませんが、増加傾向だと考えられます。
スマートフォンの普及で、日常的に手元で動画を見たり、ゲームをしたりする子どもが増えていると思います。頚椎の前弯は、成長の過程で獲得するものです。長時間同じ姿勢をしていることで、頚椎の間にある椎間板に負荷がかかり続け、傷みやすくなります。運動不足による筋力低下もストレートネックの原因と考えられ、外で健康的に体を動かすことが一番の予防法です。
運動で症状緩和も
立った姿勢を横から写真撮影などしてセルフチェックすることができます。頭の位置が明らかに前に出ている場合は、ストレートネックの疑いがあります。
現時点の医療では、真っすぐになった頚椎の配列を戻すことはできませんが、運動をして筋肉をつけることで肩こりや首の痛みの症状を緩和することができます。
内服薬や鎮痛剤は一時的なもので根本的な治療になりません。重症化して手術するようなことにはなりません。頭の重みを生かしたストレッチのほか、首への負担が少なく肩回りの筋肉を鍛えられる水泳が効果的です。日常から運動を取り入れ、生活習慣を見直し“現代病”を克服してください。