最先端医療機器の
スペシャリスト
臨床工学技士
下田 隼人さん
現代医療には人工心肺装置や人工呼吸器といった高度な医療機器が不可欠だ。こうした機器を医師の指示に基づいて操作するとともに、安全に正しく使用するための保守点検を担うのが臨床工学技士。県立小児医療センター(渋川市)に勤務する下田隼人さん(33)は、医療チームの一員として、急速に高度化するさまざまな医療機器に関する知識と技術を駆使し、スムーズな治療や検査をサポートしている。
医療と工学を両立
獣医や動物看護に興味を持っていた高校生の時、杏林大に臨床工学科が新設されることを知った。「興味のあった医療に、好きだった機械操作などを通して関わることができる。医療と工学を両立させることができる仕事に魅力を感じた」。さらに臨床工学技士を養成する学科が新たに設けられることは、この分野が広がっていき、将来、ますます必要とされることを示していると考え、臨床工学技士の道を選んだ。
日々の勉強が不可欠
人工心肺装置の操作や心臓カテーテル検査などのほか、病院内で使用する数百台の医療機器を、いつでも安全に使える状態にしておくための保守点検が主な業務だが、それぞれの機器の操作方法や特徴を深く理解しておく努力も怠らない。「同じ種類の機器でもメーカーや製造年によって、機能や使い方が異なる。医師や看護師から機器の使い方を相談されたり、質問されたりすることがある。それにきちんと答えられるようにしている」。新しい機器を購入する際の機種選定も重要な仕事。小児用の医療機器は特殊な機能が必要な場合があり、医師らが求めている機能を備えた機種についての情報も提供できるよう心掛けている。「日々の勉強が大切。知識の多さや技術が仕事に直結すると思っている」
子どもたちの回復支援
臨床工学技士は、病院のすべての診療科に関わる。それだけに、医師や看護師だけでなく、ほかの医療スタッフとのコミュニケーションが大切だが、患者やその家族とのコミュニケーションも欠かせない。「自宅で人工呼吸器を使う患者さんもいる。その場合、ご家族に機器の使い方を説明しなければならない。家族に安心して使ってもらうには、専門的な医療用語ではなく、簡潔で分かりやすい言葉で説明して、きちんと理解していただくことが大切」
同病院は県内唯一の小児専門病院で、臨床工学技士は重症患者の治療にも携わる。直接、患者と話をする機会は限られているが、回復の過程に立ち合い、元気に退院していく子どもたちを支援できることにやりがいを感じる。「医療機器は日々発達していくが、それをしっかりと使いこなして、子どもたちが少しでも早く、元気に退院できるようサポートしていきたい」