慣れない暑さ 熱中症対策を

お医者様
日高病院 総合診療内科部長 石山 延吉さん

今年も暑い夏がやってくる。県内ではすでに5月に真夏日を記録。猛暑によって誰でも発症し得るのが「熱中症」だ。さらに今年は、新型コロナウイルスの感染症対策として、気温が上がってもマスクを外せない状況が予想され、熱中症のリスクが高まることが懸念されている。日高病院総合診療内科部長の石山延吉さんは「外出自粛で例年より暑さに慣れにくい。水分をこまめに取り、暑い時間帯の行動を避けてほしい」と強調する。

大量の汗で脱水状態

暑い環境では、自律神経を介して手足の末梢血管を拡張した放熱や、汗の蒸発で熱を奪い、自然と体温調節しています。しかし、大量に汗をかくと、体内から水分や塩分が失われて脱水状態になり、体温が急激に上昇してさまざまな症状が現れます。

厚生労働省によると、猛暑となった2018年は全国で1581人が熱中症で亡くなり、そのうち8割以上が65歳以上の高齢者でした。受診者数は年々増加傾向です。

高温多湿、風が弱い、熱を発生する設備(輻射ふくしゃ源)などにより、屋外だけでなく、屋内でも熱中症になる危険性があります。

早く体温下げる

のどの渇きや暑さを感じにくくなる高齢者や、体温調節する機能が未熟な乳幼児、アスファルトからの照り返しを受けやすい身長の低い子ども、高体温になりやい肥満の人は特に注意が必要です。飲酒時や心臓病、糖尿病、高血圧、精神神経疾患など持病がある人は、自律神経の乱れや利尿作用で、脱水状態になりやすいです。

軽症では、立ちくらみといった「熱失神」、筋肉のこむら返りなどの「熱けいれん」を引き起こしますが、意識はあります。中等症の「熱疲労」では、全身の倦怠感や頭痛、吐き気や下痢などが現れ、判断力が低下。重症化すると「熱射病」と呼ばれ、高体温に加え、意識障害や発汗停止します。肝臓や腎機能障害を起こす恐れもあります。

異常を感じたらすぐに、①涼しい環境への避難②脱衣と冷却③水分、塩分の補給―をしてください。重症時に救命できるかは、いかに早く体温を下げられるかにかかっています。屋外は風通しの良い日陰、室内はエアコンが効く部屋で衣服を脱がし、濡れたタオルや冷えたペットボトルなどで、太い血管が通っている首筋、脇の下、太ももの付け根を冷やしてください。

水分の補給には、塩分も補える経口補水液やスポーツドリンクが最適です。食塩水(水1リットルに対して1~2グラムの食塩)も有効です。ただし、意識がはっきりせず自ら飲めない場合は、気道に流れ込む危険性があるため、介助者は無理やり飲まさず、すぐに医療機関に搬送してください。

マスク着用のリスク

今年は、新型コロナウイルスの感染症対策による外出自粛で、汗をかく機会が少ない状況です。暑さに体が慣れにくいため、例年以上に熱中症への注意が必要です。

感染予防のマスク着用も熱中症リスクを高める一因になると言われています。体内に熱がこもりやすくなる上、マスクの中は湿った状態のため、水分が足りていないことに気付きにくくなります。

いつも以上に水分補給を意識し、本格的な暑さを迎える前に、人混みを避けた散歩や室内での軽い運動など、効率良く汗をかく練習も心掛けてください。

熱中症対策
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