妊婦の新型コロナ対策 抵抗力高め予防策徹底を

新型コロナウイルスの新規感染者数が減少傾向になり、本県でも特別措置法に基づく緊急事態宣言が解除された。徐々に日常を取り戻す動きが現れ始める中、自粛生活からの解放で、感染の再拡大も懸念されている。目に見えない災害と向き合う中、小さな命を宿す妊婦にとって、感染の脅威をはじめ、立ち会い出産や面会の制限など不安やストレスを抱えやすい状況となっている。女性の健康に向け医療向上を目指す県産婦人科医会長の長島勇さんに、予防策や感染時の対応などについて聞いた。

働き方の見直し

―感染が妊婦に与える影響は。

妊婦が感染しても、胎児の異常や死産、流産を起こしやすいという報告はありません。妊娠中でも過度な心配はいりません。

しかし、感染症にかかわらず、一般的に妊婦が肺炎にかかると、妊娠特有の免疫力低下や心肺機能の変化が影響し、重症化する恐れがあります。妊娠中は非妊娠時より、一層の感染防止に努める必要があります。

―抵抗力を高める方法は。

十分な睡眠と、バランスの良い食事で栄養を取ることが大事です。日ごろから体調を整え、出産に備えてください。

―どのような予防策が必要ですか。

人混みを避け、こまめに手を洗うなど日ごろの健康管理を徹底することが一番重要です。「3密」(密閉・密集・密接)になるような場所を避けてください。

マスクは本来、感染者が人にうつさないために着けるものですが、ウイルスが付いた手で鼻や口を触ることで感染するため、マスク着用は一定の効果があります。

働いている妊婦は、働き方を見直してください。国からの要請もあるように、会社は妊娠中の女性労働者が休みやすい環境を整備し、集団感染を防ぐためにも、テレワークや時差通勤の積極的な活用を促進してください。

風邪症状すぐ相談を

―感染症の症状の特徴は。

妊娠すると、病原体やウイルス感染細胞などの異物を排除する免疫力が下がります。重症化するリスクもあるため、風邪症状が続く場合は、すぐに専用窓口に電話相談してください。

発熱やせきなどのほか、強いだるさや息苦しさ、味覚、嗅覚の異常や低下に加え、頻度は低いですが下痢などの症状も見られます。妊娠中でも肺炎を確認する胸部レントゲン、CT検査は躊躇ちゅうちょなく行ってください。被ばくによる胎児への影響は極めて低く、自分の命を守ることが先決です。

症状

―妊婦に対し周囲が気を付けることは。

喫煙は重症化するリスクが高いです。鼻やのどなど上気道から感染し、肺炎を引き起こします。受動喫煙もよくありません。本人、家族ともに禁煙してください。 家族に感染や疑いのある場合は、①別室で過ごして接触を避ける②タオルや食器の共用を避ける③家庭内でもマスクを着用し距離を開ける―などの対応をしてください。

万全な体制整う

―妊婦が感染した時の対応は。

中国で感染した妊婦11人のうち、10人が帝王切開をしました。出産までの時間が長いと、院内感染のリスクが高まるための措置です。日本でも同様の対応が勧められています。

胎児は母親から子宮内感染する可能性がありますが、感染した新生児が重症化しやすいという報告は今のところありません。

5月に特例承認された国内初の治療薬「レムデシビル」(抗ウイルス薬)は、データがないため妊婦への治療効果や影響は分かっていません。

―県内での医療体制は。

現時点では、県内で妊婦が感染した報告はありません。PCR検査で陽性が確認され、入院が必要な場合、「県新型コロナウイルス感染症対策本部病院間調整センター」が入院調整を行います。感染した妊婦の受け入れは、県内に4施設あり、万全な体制を整えています。また、感染が疑われる妊婦が分娩した場合は、新生児の隔離が必要となります。

―里帰り出産の県内の受け入れ状況は。

日本産科婦人科学会は、居住地での出産を勧めていますが、県内での里帰り出産の受け入れは、原則拒否していません。妊娠30週くらいで余裕を持って里帰りし、最低でも2週間程度、実家などに滞在して発熱などの症状がないことを確認してから来院してください。

また、里帰りを希望していても、状況によって居住地での出産に切り替えることもあると思います。その際は、担当医師に相談して施設を決めてください。

―不妊治療者への対応は。

感染防止の観点から、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会の3学会の見解として、「基本的に延期できるものは延期」としています。

特定不妊治療(体外受精または顕微授精)を受ける夫婦が、治療の延期を余儀なくされることが想定されます。国は不妊治療の助成対象となる年齢要件を時限的に緩和し、治療期間初日の妻の年齢を43歳未満から44歳未満に引き上げるなどの対応をしています。

―妊婦や妊娠希望者にメッセージを。

院内感染を防ぐためにも、体調不良をはじめ、感染者や疑いがある人と濃厚接触した場合は、受診前に、必ずかかりつけの産科医療機関に電話相談してください。

妊婦健診の受診を延期する場合には、可能であれば自宅で血圧を測定して記録してください。不正出血、おなかの痛み、破水感、血圧上昇などの症状がある場合にも医療機関に電話相談してください。

立ち会い出産や面会を控える病院も多いですが、これから出会う赤ちゃんのためにも、手洗いや人混みを避けるなどできる対策をしっかりとして感染を防ぎましょう。

県産婦人科医会長 長島 勇さん
ながしま・いさむ
1943年、東京都生まれ。慶応大卒。78年に高崎市で産婦人科医院開業。閉院後、2010年から同市の佐藤病院に勤務。12年から現職
新型コロナウイルス感染症対策

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