患者と家族の 不安取り除く

医療ソーシャルワーカー 玉川 佳史さん

病気やけがをした時、治療が必要になるだけでなく、退院後の生活や仕事のこと、医療費の負担などさまざまな不安が生じる。そうした問題に対して患者や家族の相談に乗り、行政機関などと連携しながら解決の手助けをするのが医療ソーシャルワーカー。太田記念病院(太田市大島町)に勤務する玉川佳史さん(28)は、患者や家族に寄り添いながら多岐にわたる相談に対応している。

患者や家族の不安を取り除くため真剣に話を聞く玉川さん

両親の入院が契機に

もともと人と関わることが好きな性格で、小中学校の職場体験は高齢者施設に行った。そんな中、両親がそれぞれ違う時期に入院したことがあった。「今後どうなってしまうのか不安を覚えた」。そうした不安に寄り添う医療ソーシャルワーカーという職業があることを知り、大学で社会福祉を学んだ。高崎市内の特別養護老人ホームで介護士として2年半働いた後、地元の太田記念病院でこの仕事に携わり4年目になる。

目指す生活像つかむ

相談の中で特に多いのが、入院患者の退院調整。リハビリができる病院の紹介や、住み慣れた自宅に帰る場合でも、必要に応じてケアマネジャーと連携して介護サービスなどの調整を行う。自宅に帰るのが困難な患者には高齢者施設を提案して調整することもある。

患者は高齢者に限らない。働き盛りの人が復職できずに不安を抱えたり、障害を負うケース、路上生活者が搬送されることもある。障害年金や生活保護といった社会保障制度の申請を援助するなど、関係機関との調整も重要な業務だ。「いろんな患者がいて、相談内容は一人一人異なる。患者や家族の話にしっかりと耳を傾けることが大事」。今後どのような生活を送っていきたいのか。それを知ることが解決への出発点になる。

地域と病院つなぐ

患者や家族の希望は、治療に当たる医師や看護師をはじめ病院内のスタッフと共有。目標に向かって全員で支える仕組みをつくっている。患者らと共に悩みながら解決策を考え、それが実現できた時は大きな喜びだ。「患者や家族の不安を和らげ、次の居場所にしっかりとバトンを渡せた時にやりがいを感じる」

一方、患者が自宅に帰ることを望んでも難しいケースなど、思うような支援ができないこともある。太田記念病院の医療ソーシャルワーカーは8人。他のスタッフとも相談し、いろんな角度で考えながら、その時のベストを尽くすよう心掛けている。

市役所や施設など地域の機関と病院をつなぐ懸け橋の役割も担う。「医師に相談したいことがあっても、病院外からはなかなか難しいと思う。自分たちが間に入ることで、少しでも地域と病院の距離が縮まればうれしい」

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