味自慢の 県産豚肉
日本の長寿に 一役

豚舎で給餌などの世話をする齊田さん

本県は全国有数の養豚県で、地域の特色を生かした多くの銘柄豚が生産され、市場に出荷されている。豚肉は良質なタンパク源であり、筋肉の維持に欠かせない必須アミノ酸の1つ、ロイシンを豊富に含んでいる。また、特徴的な栄養素として、疲労回復や夏バテの解消に役立つビタミンB1も豊富だ。暑さに向かう折、おいしい県産の豚肉をたくさん食べて、元気に夏を乗り切ってほしい。

赤城山麓の傾斜地に広がる養豚団地。広大な敷地にはたくさんの農場があり、豚舎があちこちに点在している。

上州銘柄豚の1つ「赤城ポーク」を生産している齊田さんの農場は、坂道を上り詰めた奥まった場所にある。標高は550m。3km離れた自宅とは200mほどの標高差があり、夏は比較的過ごしやすいという。

養豚団地ができたのは50年ほど前。「当初は20人が農場を経営していたということですが、今は6人に減ってしまいました」と齊田さん。農場の閉鎖が続く中で、齊田さんは徐々に規模を拡大。現在は600頭を飼育し、年間約14,000頭を出荷している。「家族経営なら200頭が限界。たくさん飼育できるのは、社員2人と海外からの実習生5人の手助けがあるからです」と感謝する。

広々とした農場で働く齊田さんや社員、実習生ら

ブランドは「赤城ポーク」

齊田さんが養豚の仕事に就いたのは22歳の時。県立農林大学校を卒業後、ドイツの養豚農家で1年間研修を積み、家業を手伝う形で豚の飼育作業を始めた。「当時は70頭くらいでした」と振り返る。

母豚の分娩から肥育、出荷までをすべて手掛ける一貫経営を当初から貫いている。父親から家業を任されたのは30歳のとき。飼育数は150頭だったが、大規模経営を目指して頑張った結果、4倍まで増やすことができた。

ブランドの「赤城ポーク」は、「ランドレース」と「大ヨークシャー」を掛け合わせた母豚に、「デュロック」を父豚として交配させた三元豚。麦類を多く含む植物性主体の飼料で育てることで、臭みがなく脂身もさっぱりしていて、「おいしい」と人気がある。「もちろん、肉の締まりと色も良好です」と齊田さん。子豚が元気に育つよう、餌だけでなく飼育にも気を配り、愛情を持って接している。

ストレス与えない飼育を

「最も大切なことは、豚にストレスを感じさせないことです」と齊田さんは言い切る。4㏊の農場には分娩など繁殖に関わる豚舎が5棟、肥育関係の豚舎が10棟あり、成長に合わせた飼育を心掛けている。また、豚舎の清掃を小まめに行い、温度管理も徹底して、少しでもストレスを与えないよう注意している。「消毒や清掃は、豚熱などの感染症対策にも役立ちます」

養豚に限らず、畜産に付きまとう悩みは休みが取りづらいことだという。齊田さんは休日の取れる経営を目指しており、「ドイツ研修で学んだことです」と話す。社員と実習生でローテーションを組み、しっかりと休むことで、いい仕事につながっている。「赤城ポークは安全・安心で味も最高です。ぜひ食べてみてください」と齊田さんは笑顔を見せた。

*制作協力/群馬県農政部

元気な暮らしに 役立つ 栄養のお話
高崎健康福祉大学大学院
食品栄養学専攻教授
松岡 寛樹

はじめに

日本では仏教の影響もあり、天武天皇の時代に初めて肉食が禁止された。その後、江戸時代まで続いたが、実際には「薬食い」としての肉食が横行した。つまり、病人の養生や健康回復といったことを名目として肉食は続き、明治時代に入り天皇自ら食し、肉食礼賛へと移り変わった。

群馬県は古くから養豚が盛んであり、現在では全国4番目の飼養頭数を誇り、そのシェアは約7%を占める。豚肉は値段が手ごろであるため、他の肉と比べても外食用途よりも家庭での消費が高いとされている。群馬県の一世帯当たりの肉の年間消費量は他県と比べると低く、残念ながら全国的にみても下位に位置している。

高品質化

一昔前は、豚肉は脂身に特有の臭みがあり、苦手な人も多かった。と畜場法改正やHACCPの導入により、飼育現場、食肉処理、家庭に届くまでの工程が極めて高度な衛生管理が行われるようになり、大変おいしくなっている。さらにはSPF豚(いわゆる無菌豚)飼育のための認定基準が制定されるまでになった。それでも加熱後の豚肉の匂いは、他の肉と比べて好き嫌いが分かれるようである。

栄養

豚肉の栄養学的な特徴は、水分が50~74%を占め、たんぱく質13~23%、脂質2~40%、炭水化物はわずかである。たんぱく質は栄養価が高く、不足する必須アミノ酸はない。脂質については一般の人が持つイメージとは異なり、構成脂肪酸の約50%が不飽和脂肪酸であるオレイン酸とリノール酸となる。脂身の多いバラ肉では脂質40%を占めているが、ヒレ肉では2%程度となり、部位によって異なる。

その他、ビタミンB1が多いことも特徴で、ご飯などの糖質と一緒にビタミンB1を摂取すると、糖質を効率良くエネルギーに変化させる働きがある。ご飯からエネルギーの大半を摂取する日本の食事には、ビタミンB1は欠かせない。ビタミンB1が不足すると乳酸やピルビン酸などの疲労物質が蓄積し、夏バテの原因ともなる。これからの季節アルコールの摂取も増えるが、アルコールの分解にもビタミンB1が必要となる。また、米糠よりもビタミンB1は少ないが、脚気予防にも役立っている。

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