生活習慣で防げる
脳梗塞
黒沢病院
副院長兼脳卒中センター長
大森 重宏さん
日本人の死因で、がん、心疾患に次いで多いのが脳血管疾患。脳の血管の異常で引き起こされる脳卒中のうち、4分の3を占めるのが「脳梗塞」だ。半身まひや失語などの症状が現れ、重症化すると命にも関わる。冬場に多いと言われてきたが、最近では、夏場の発症も増えており、これからの暑い時期は注意が必要だ。黒沢病院副院長兼脳卒中センター長の大森重宏さんは「早期発見、早期治療が重要。生活習慣を見直せば防げる病気」と訴える。
動脈硬化、不整脈で発症
脳卒中とは、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の総称。脳梗塞が最も多く発症し、加齢や生活習慣による動脈硬化などで、脳の血管が詰まって脳に酸素や栄養が送られなくなり、脳の細胞が障害を受けます。厚生労働省によると、全国に患者は112万人(2017年)おり、高齢化で増加傾向です。
脳梗塞は主に3種類あり、発症割合は同じです。「ラクナ梗塞」は軽症で、脳の細い血管が詰まります。「アテローム血栓性脳梗塞」は中等症で、脳の太い血管が細くなったり、詰まったりして発症します。いずれも動脈硬化が原因です。命の危険や重度の後遺症を伴うのが「心原性脳塞栓症」。不整脈で心臓にできた血栓(血液の塊)が脳に運ばれ、太い血管が詰まって起こります。
早期発見、治療が鍵
脳梗塞では、意識障害、高次脳機能障害、手足のまひ、言語や嚥下、視野の障害などが突発的に現れます。一時的に脳の血流が悪くなり、手足がまひするTIA(一過性脳虚血発作)は、点滴で回復しますが、将来的には3割の方が脳梗塞になると言われています。また、脳梗塞を発症し、入院時に意識があり手足のまひがなくても徐々に進行し、危険な状態になることもあるので、発症から約2週間は注意が必要です。
早期発見するために提唱されているのが「FAST」という言葉です。Face(顔の片側が下がる、ゆがむ)、Arm(片腕に力が入らない)、Speech(言葉が出てこない、ろれつが回らない)、Time(発症時刻)。症状に気付いたら発症時刻を確認して、すぐに救急車を要請してください。
発症から4.5時間以内であれば、t-PA(経静脈血栓溶解療法)が有効で、血栓を溶かして血液の流れを回復させます。また、8時間以内であれば、血管内の血栓を取り除く血栓回収術も可能です。いかに早く治療ができるかが鍵です。重症化すると、命は助かっても半身まひや寝たきりなど、その後の生活に大きな支障をきたします。
水分補給徹底を
日本脳卒中データバンクによると、脳梗塞の発症は平均74.4歳(2018年)と高齢者に多いですが、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病も危険因子となります。
低食塩、低脂肪、高タンパクの食事、ウオーキングといった軽い運動などを心掛けることで、生活習慣病の多くは改善されます。若い時から日常生活を見直すことで、脳梗塞のリスクは回避されます。
異常な夏の暑さによる脱水状態も危険です。血液が濃くなって血流が悪くなり、発症するケースが増えています。熱中症対策だけでなく、脳梗塞対策としてもこまめな水分補給を徹底してください。