地域の 「保健室」 目指す

薬剤師 石井 正久さん

一人の薬剤師が患者一人一人の服薬状況を把握し、薬だけでなく日常の健康相談などにも応じる「かかりつけ薬剤師・薬局」。病気や重い要介護状態となった高齢者が地域で暮らし続けられるよう、医師や看護師、ケアマネジャーなどの専門職が連携して支援する「地域包括ケアシステム」の一翼を担う存在でもある。小谷薬局(前橋市城東町)の4代目・石井正久さん(34)は、対話や相談を重ねながら、地域の健康を見守る。

利用者の体調や症状、困り事に耳を傾け、市販薬を提案する

地域支えるチーム医療

前橋の中心市街地で1927(昭和2)年に創業した老舗薬局。「前橋の漢方」を掲げ、漢方薬の相談や処方箋に基づく調剤に対応する。地域の人から信頼され、感謝されていた祖母と父の背中を見て薬剤師を志し、先代の急死に伴い家業を継いだ。仕事は調剤だけでなく店頭での相談、処方医や医療機関との連携、在宅患者への訪問・服薬指導など多岐にわたる。「病院とは違うが、『地域を支えるチーム医療』という意識で取り組んでいる」

情報発信で信頼築く

かかりつけ薬剤師は、薬を一人の薬剤師が一括管理することで、副作用や重複、飲み合わせを確認できるメリットがある。夜間や休日など開局時間外も電話で相談に応じるほか、時流に沿い、無料通信アプリ「LINE(ライン)」やツイッターなどSNSでも受け付ける。目指しているのは、病院に行くほどではないが、気になることがあったらすぐに駆け込める地域の「保健室」だ。安心して話せる信頼関係をつくるため、こまめな情報発信を心掛けている。SNSやブログのほか、ポストカード大の「小谷薬局通信」を月1回作成、店頭で配布。妊活中の男女に向けた「子宝セミナー」も定期的に開いており、「子宝に恵まれた」「話しただけでも楽になった」の言葉にやりがいを感じている。

健康は日常の積み重ね

「むくみがあるなら、小豆の煮汁やハトムギに利尿効果があります」「柑橘類やハーブティーなど、香りのあるもので心のリフレッシュを」。薬の相談では、食事や生活習慣についてアドバイスすることが多い。「健康寿命は日常の積み重ね。薬の前に体を整えることが大事」。昨年12月の薬局通信には、「画期的な健康法はありません」と題し、よく耳にする①30回以上よくんで食べる②旬のものをバランスよく食べる③しっかりと寝る④適度に身体を動かす⑤よく笑う─が一番と記した。健康と病気の中間である「未病」段階でフォローできるのもかかりつけ薬剤師の利点だが、薬局に立ち寄るのにも抵抗がある人はまだまだ多い。「喫茶店が好きなので、法律が許す範囲で薬膳カフェのような気軽に立ち寄れる場所をつくってみたい」。地域の役に立つ存在であるために、新たな薬局、薬剤師の在り方を模索する日々だ。

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