人と人として
向き合い自立促す
精神保健福祉士
小林 勇也さん
精神保健福祉士の小林勇也さん(33)は、アルカディアグループホーム事業所(太田市大島町)に勤めて8年になる。心の病を抱えた入所者の意思を尊重し、本来持つ力を発揮できるように掃除や買い物などの生活訓練や援助を行う。本人だけでなく、家族の相談も受けて助言するほか、関係機関との連絡・調整を行い、社会参加できるように支援している。
人の心に近い仕事
高校時代に販売のアルバイトをしたとき、人と話すことの楽しさを知った。「より人の心に近い仕事をしたい」と東京福祉大に進学。精神や身体、知的障害、老人介護の福祉施設などで実習を重ねた。
心に障害を抱える人たちのいる作業所で「来てくれてうれしいよ。話を聞いて一緒に考えてほしいんだ」と通所者から気さくに話し掛けられたことが、深く心に残った。障害者福祉の分野は医療と地域の二つあるが、一人の生活者として関われる地域福祉の道を選んだ。
共に考え助言する
今はサービス管理責任者と生活支援員の仕事を兼務している。担当のグループホームを毎日訪ねて雑談しながら距離を縮め、信頼関係を築いている。利用者の悩みを聞き、様子を確かめながら共に考えて助言するほか、一人で運べない買い物に同行、必要があれば部屋の掃除や配膳を手伝い、草むしりに汗をかく。心が不安定になって本人や周囲が困っている場合は、受診に同行し、医師に状況を説明するため同席することもある。
家族には本人の長所がわかりづらいケースもある。「美点を伝えつつ、家族の悩みに寄り添って一緒に解決策を探る」ことも大切な役目の一つだ。グループホームは社会参加への通過点の一つと考えられている。利用者を取り巻く支援機関と連携し、暮らしぶりを伝え、今後のより良い生活に向けて定期的にケア会議を開いている。
本人の力引き出す
利用者の大半が人生の大先輩。現職に就くまで一般企業で働き、遠回りしてきた。「人と人として同じ目線で向き合い、本来の力を発揮できるように、本人を主体として考えるように意識している」が、ふと気付くと自分の意見を主導していることがある。一人で抱え込まず、広く同僚や上司と話し合い、意見やアドバイスをもらうことで、自分本位の支援に陥らないように心掛けている。経験が増しても妥協せず、利用者に「頼ってもらえる、少しでも心に残る対応ができるように、アンテナを張り、自分を高めていきたい」と自身を鼓舞している。