大腸がん検診で
早期発見を
県済生会前橋病院
消化器内科部長
迫 陽一さん
国立がん研究センターによると、新たに診断されるがん罹患は「大腸がん」が最も多く、約15万3000人(2017年)と報告され、日本人のがん死因の第2位となっている。高齢化や生活習慣の変化に伴い増加傾向だ。県済生会前橋病院消化器内科部長の迫陽一さんは「他のがんと比べ見つかりやすい。毎年必ず検診を受けてほしい」と強調する。
食事の欧米化
大腸がんは、結腸(盲腸からS状結腸)と直腸(直腸S状部から肛門直前の下部直腸)で発症するがんの総称で、大腸の粘膜から発生するがんです。30代から年齢が上がるにつれて多くなります。発生の仕方は大きく二つ。正常の粘膜ががん化する場合と、良性の大腸腺腫というポリープが年月を経てがん化する場合があります。早期大腸がんでは後者の方が多いのが特徴です。
原因として、高齢化のほか、食事の欧米化など生活習慣との関わりがあると考えられています。牛や豚、羊などの赤肉やベーコン、ハム、ソーセージなどの加工肉の過剰な摂取をはじめ、飲酒や喫煙がリスク因子に挙げられます。
肥満や体脂肪が多いと危険性が高まるとも言われています。大腸がんの病歴がある家族がいる場合は注意が必要です。遺伝性は少ないですが、食生活といった生活習慣が似てくるためです。また、潰瘍性大腸炎やクローン病など慢性的に腸の強い炎症が続いていると発症する可能性が高まります。
便潜血陽性は必ず検査
禁煙はがん予防に効果的です。腸に負担がかかるため、暴飲暴食、酒の飲み過ぎに注意して規則正しい食生活を送り、特に野菜などの食物繊維を含む食品を適度に摂取してください。週3回、1日30分程度のウオーキングなどの有酸素運動も有効です。
早期の場合、自覚症状はほとんどありません。進行すると便に血が混ざり、貧血を起こすことや、便秘や頻繁に少量の下痢を繰り返したり、おなかの張りや排便後に便が残ったような感覚が生じたりします。
進行してがんが大きくなり、腸閉塞を引き起こすと緊急措置が必要です。さらに肝臓や肺、腹腔内などの他臓器への転移が生じると命に関わります。進行したがんでは開腹や腹腔鏡手術の外科的切除を第一に、転移した場合は抗がん剤を使った化学療法を検討します。
早期発見には、市町村の大腸がん検診や人間ドック、健康診断で便潜血検査を定期的に受けることが効果的です。検査で2回便を取り、一度でも陽性と判断された場合は、大腸内視鏡検査を受診することを強くお勧めします。
早期治療は後遺症なし
ここ数年の医療技術の進歩により、内視鏡検査で早期がんのほか、がん化する可能性がある良性のポリープも予防的切除をすることが多くなっています。外科的切除では、食事の管理や術後の体力回復といったリハビリが必要なケースもありますが、早期の内視鏡切除では後遺症はほとんどなく、治療後も普通に日常生活が送れます。
内視鏡でがん表面の構造を観察することで、がんが粘膜の下の深いところに進行していても、かなりの確率で正しい診断ができます。毎年検診を受け、便に出血が見つかったら必ず内視鏡検査を受けてください。