手足失った患者
サポート
義肢装具士
横田 理さん
医師から患者の病状などを聞き、指示に従って義手や義足といった「義肢」、あるいはコルセットなどの「装具」を作るのが義肢装具士だ。患者の希望や思いをくみ取り、それを実現するため、ものづくりの技術と医療知識を駆使。それぞれの患者に最も適した義肢装具を提供する。上毛義肢(前橋市元総社町)の横田理さん(31)は、病気や事故などで手足を失った人たちの生活をサポートする専門職として、日々、努力を続けている。
きっかけはテレビ番組
中学生の時、アスリート用の義足を取り上げたテレビ番組を見たのがきっかけだった。「誰が、どうやって作っているのだろう」。そんな思いから高校卒業後、専門学校に進んだ。義肢装具に関する知識や技術だけでなく、基本的な医療知識、英語なども学んだ。「初めてのことばかりで、未知の世界に触れられることが楽しかった。ただ、臨床実習で義足を使っている方と初めて対面した時、すごく緊張したのを覚えている」
患者との対話が大切
義肢装具の製作には「採寸・採型」「組み立て」「仮合わせ」「仕上げ」といった工程がある。患者に違和感なく使ってもらえる義肢装具を作るには、ものづくりの技術だけでなく、コミュニケーション能力が必要だ。「切断部分の状態はどうか。どんな使い方を希望しているのか」といったことを丁寧に聞き取る。その上で、切断した手や足を入れる部分「ソケット」を作り、ソケットにいくつかのパーツを組み合わせていく。「ソケットをミリ単位で調整したり、特徴や性能の異なるパーツの組み合わせを考えながら、何度か作り直して100%に近づけていく」。ただ、そうやって作っても、切断部分の変化や体重の増減、加齢などで体が変われば、調整したり、作り直したりしなければならない。
ゴールのない仕事
義肢装具の製作工程のうち、医師や患者に話を聞く工程と、製作工程の担当を分ける会社もあるが、同社ではすべて一人でこなす。「一貫して担当できる会社を希望していた。いろいろなことを学べるのがいい」とほほ笑む。
「初めて会った時は元気のなかった方が、義肢や装具を付けて数カ月後には元気を取り戻す。そういう姿を見られるのが楽しい」。難しさもある。医師や患者などいろいろな人と関わり、それぞれの意見や希望を聞き、調整するのに苦労するという。
入社8年目。「進歩はしていると思う。作れるものが増えている」と手応えを感じている。ただ、満足はしていない。「新しいパーツの知識や情報がないと使いこなせない。作ったことのない義肢もある。どんなものでも依頼があれば作れるようにならないといけない。ゴールはありません」。技術を磨き、知識を吸収する日々だ。