トロトロの 食感が魅力
どんな料理にも あう

腰をかがめて白ナスを収穫する上原さん

夏秋野菜の代表格に挙げられるナス。鮮やかな紫色が特徴だが、皮の色が白や黄緑色のものもあり、一般に「白ナス」と呼ばれている。まだ消費者に馴染みが薄いが、紫色のナスと同様、腸内環境を整える食物繊維や利尿作用のあるカリウムなどを多く含んでいる。味もアクが少なく食べやすいうえ、加熱するとトロトロの食感が楽しめる。お好みの調理法で、ぜひ味わってみてほしい。

旧中山道の面影を残す杉並木から北へ少し入った所に、上原さんのナス畑がある。広さは約11a。整然と並ぶV字型の支柱と支柱の間に、青々と大きな葉を広げた白ナスが、何列にもわたっている。

白ナスの高さは1~1.5m。普通のナスより低いが、実は楕円形で一回りも二回りも大きく、収穫時は250~350gにまで成長する。また、花は紫色なのに実は黄緑色で葉と見分けにくく、収穫の際は目を凝らす必要がある。

「今年は700本の苗を植えました。私1人では少し荷が重い数です」と、上原さんは日焼けした顔で苦笑する。

収穫作業は毎日、たった1人で朝5時から5時間かけて行い、昼までに箱詰めしてJA碓氷安中に出荷している。スクワットのような姿勢で収穫するので、足腰がつらくなることもしばしばだという。

果皮が黄緑色の「トロまる」

ブランド名は「トロまる」

農家の次男として生まれた上原さんは、サラリーマン生活を経て57歳で就農した。「知り合いの農業委員に勧められて、休耕地を借りたのが始まりです」と振り返る。

コメ作りを手始めに、ゴーヤやズッキーニなどさまざまな野菜も手掛けるようになった。ナスは6年前からで、紫色の一般的なナスがメーンで、白ナスに本腰を入れるようになったのは昨年から。

スーパーであまり見かけることのない白ナスだが、JA碓氷安中地域は昨年まで県内唯一の産地として知られ、9人の農家が年間4t余り(令和元年)を生産した。地元の直売所で販売しているものの、大半は「トロまる」のブランド名で東京方面に出荷され、多くの県民にとって馴染み薄だ。「『これは何?』『どう調理して食べるの』と、直売所で尋ねる人が多いようです」と上原さん。

10月末まで収穫作業

白ナスの収穫期はとても長い。上原さんは5月初めに苗を定植し、6月半ばから10月末まで収穫作業に汗を流す。「品質や収量のアップに向け、追肥や病害虫防除などに気を配り、常に良好なコンディションを保つよう努めています」と話す。

収穫した「トロまる」は、黄緑色のせいか果皮が硬そうに見えるが、加熱すると名前のごとくトロトロとして、まさにとろけるような食感が味わえるという。「私は焼いて食べるのが一番好きです」と上原さん。「生のまま小さく切って、マリネやサラダにしても甘みがあっておいしいです」とも話す。

本県はナスの栽培が盛んで、夏秋ナスの出荷量は全国1位を誇る。「トロまる」について、県は普及と認知度アップに努め、本県自慢の野菜に育てたい、としている。

*制作協力/群馬県農政部

元気な暮らしに 役立つ 栄養のお話
東洋大学食環境科学部
健康栄養学科教授
高橋 東生
今月の食材

由来

ナスは、果実の形が長、卵及び丸のもの、果色が紫、白、緑のもの等、多彩な地方品種の分化が見られます。インド原産ですが、中国では5~6世紀に記録が見られます。わが国でも8世紀には記録があり、10世紀頃にはさかんに利用されていたと推定されています。古くは“なすび”といい、語源も諸説ありますが、なつみ(夏の実)からなすみ、なすびに変化したともいわれます。現在栽培されているものの大半は、一代雑種の長形又は卵形の黒紫色種が主流で、周年出荷されています。

平成30年度の収穫量上位3県をみると高知県、熊本県、群馬県となっています。

特徴

英語ではEggplant=たまご植物と呼ばれるように白いものも珍しくありません。白ナスは黒紫色も葉緑素も形成されません。名前のとおり白く、卵型なので「たまごなす」とも呼ばれます。皮がやや硬く、アクも少ないですが生食には向いていません。ただ、最近では生食用の白ナスも栽培されています。煮ると煮汁が黒くならないことも特徴です。黒紫色ナスの果皮はアントシアン系のナスニンとヒアシンの配糖体が主体です。ナスニンは赤紫色で抗酸化作用があり、動脈硬化予防や老化予防などに効果があるとされています。

ナスは90%以上が水分ですが、トマトやキュウリと異なり果汁が遊離しにくい特徴があります。しかし、加熱すると組織が柔らかくなり、果汁が遊離しやすくなります。その他の成分では、塩分などを体外へ排出する働きがあるカリウムや、腸内環境を整える食物繊維などが含まれています。

調理

ナスは組織が粗く、煮ると崩れやすいという特徴があり、油炒めや揚げ物に向いています。また、ナスの色素は水溶性なので、油を使うことで色の溶出や破壊を防ぐことができます。

なすはアクがあり、ポリフェノールによる褐変もおこりやすいので、切ったらすぐに水に入れ防ぎましょう。アクの成分は100℃以上で数分加熱すると甘味に変わるといわれています。加熱すると舌触りがなめらかで、味の濃厚なたんぱく質食品と組み合わせると風味が引き立ちます。はさみ焼き、はさみ揚げなどのほか、たっぷり汁を含ませた含め煮、炒め煮にするのもよいでしょう。

100gあたりの栄養成分値
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