食道アカラシア

つかえ感胸の痛み 手術で改善へ

桐生厚生総合病院(桐生市)
病院長 加藤 広行さん

食道アカラシアとは、あまり聞き慣れない病名だと思います。食道と胃のつなぎ部分が狭くなり、食べ物が流れにくくなる病気です。症状は固形物だけでなく、飲み物も飲み込みにくくなり、胸のつかえ感や痛み、胸焼けが生じます。さらに嘔吐おうとが起こることがあり、特に夜間、寝ている時に多い傾向があります。

正常な食道・食道アカラシア

明らかな原因は不明ですが、食道の運動(筋肉)を支配する神経の障害とされています。食べ物を胃に運ぶための筋肉は、脳からの信号でコントロールされており、この信号に何らかの障害が起きていると考えられています。発症するのは10万人に1人程度と比較的まれな病気で、年齢は20代から50代が多いとされています。初期の場合には診断が困難で、狭心症や摂食障害などの精神的な症状ではないかと見過ごされることもあります。予防法は分かっていません。

根本的な治療はありませんが、通過障害を改善させる主な治療は①薬物療法②バルーン拡張術③腹腔鏡下筋層切開術④経口内視鏡的筋層切開術「POEM(ポエム)」 ―の四つです。薬物療法のみで症状が改善することはまれです。バルーン拡張術は、内視鏡下に風船を入れて狭い部分を拡張させる方法で、40歳以上で80%程度効果がみられますが、若年者では効果が少ないです。

腹腔鏡下筋層切開術は、腹部に5カ所の穴をあけ、腹腔鏡を挿入して手術します。POEMは新たな治療法で、体に傷を付けずに内視鏡(いわゆる胃カメラ)で行う手術です。ともに食道下端の筋層を切開し、治療成績は年代を問わず良好です。「若年者のつかえ感や胸の痛みはアカラシアを疑い、高齢者では食道がんを疑え」と言われます。異常を感じたら専門医に相談しましょう。

協力/群馬県医師会
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