新型コロナとインフル対策 予防に努め同時流行防げ 新型コロナとインフル対策 予防に努め同時流行防げ

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の収束が見通せない中、冬場のインフルエンザとの同時流行による医療現場の混乱が懸念され、国は体制整備を進めている。両者の症状の区別は困難だと指摘されているが、手洗いや咳エチケット、3密(密閉・密集・密接)を避けるなどの予防策は共通しており、徹底することが重要だ。県立小児医療センターのアレルギー感染免疫・呼吸器科部長の清水彰彦さんに、原因や対策などについて聞いた。

県立小児医療センター
アレルギー感染免疫・呼吸器科
清水 彰彦 さん
しみず・あきひこ 1981年、滋賀県生まれ。東京大医学部卒。千葉県の亀田総合病院感染症科フェローを経て2018年4月から現職

区別は難しい

―新型コロナとインフルエンザの症状は。

ともに気道感染するウイルス感染症で、発熱、せき、息切れ、呼吸困難、倦怠感(疲れやすい)、咽頭痛、鼻汁、頭痛などの症状が現れ、嘔吐や下痢が生じることもあります。両者の症状を区別することは難しいですが、異なる点もあります。

インフルエンザは感染後、1~4日程度で発症しますが、新型コロナは平均5、6日、最大14日間と潜伏期間が長く、発症後1週間程度して急速に呼吸障害が進行することもあります。一部の患者にしか見られませんが、味覚・嗅覚障害が現れます。インフルエンザでは、まれに脳症による意識障害やけいれんといった中枢神経合併症、心筋炎などの合併症が起きることがあります。

―インフルエンザの患者数は。

毎年全国で1千万~1200万人程度が罹患するとされていますが、2019~20年のシーズンの罹患数は800万人程度でした。新型コロナによる外出自粛や感染予防により流行が抑えられたと考えられます。例年、年末から1月にかけてインフルエンザA型が大きく流行し、その後B型の小さな流行の波が来ます。

10月からインフル接種

―新型コロナとインフルエンザに感染する原因は。

どちらもウイルスがヒトの気道粘膜に付着することで感染します。せきやくしゃみ、会話の時に生じた飛沫ひまつを浴びる(飛沫感染)、ウイルスが付着したドアノブなどに触れた手で鼻や目をこすって感染する(接触感染)経路が、主な感染経路と考えられています。

―冬場にウイルス感染しやすい理由は。

低温・低湿度(乾燥)の環境下でウイルスの生存期間が延びます。冬場はまさにそうした状況のため、感染する確率が高まると言えます。乾燥により、ヒトの気道粘膜が傷付きやすく、ウイルスが付着しやすくなります。気温が低いと窓を閉め暖房をかけることで、換気が悪く乾燥します。そうしたリスクが大きくなる冬場は、特に感染予防に注意しなければなりません。

インフルエンザ以外にも、ノロウイルスやロタウイルスなど胃腸炎の原因となるウイルスも流行しやすい時期になります。

―感染しやすい人、重症化しやすい人は。

両者とも誰でも感染する可能性があります。新型コロナは小児に感染しにくいことが分かってきていますが、詳しい理由は不明です。ともに高齢者や肥満、心臓や肺などの基礎疾患がある人は重症化しやすい。そのほか、新型コロナでは糖尿病や高血圧、悪性腫瘍や腎不全など、インフルエンザでは2歳未満の乳幼児や妊婦、免疫不全の人が重症化することが知られています。

―インフルエンザワクチンの接種時期は。

生後6カ月以上の全員に推奨されているワクチンです。この冬は例年より1割ほど多い6千万人分のワクチンが準備されます。国が優先接種とする高齢者のほか、重症化しやすい乳幼児や妊婦、基礎疾患がある人は10月上旬から、それ以外の人たちは、10月下旬から接種してください。

相談と予防の徹底

―国は新型コロナワクチンの全員無料接種を検討している。

第3相試験(承認直前の段階)に進んでいるワクチンは複数あります。抗体価(抗体の強さ)の上昇は確認されていますが、実際の予防効果や、副作用はどのようなものがあるのかを注視しています。安全性が高く効果の高いワクチンが流通し、全員が接種できるようになるのは、来年以降になると思います。

―同時流行の混乱を避けるには。

高熱や息苦しさ(呼吸困難)など強い症状がある時、風邪症状が4日以上続いた時、重症化するリスクの高い人はそれより少し軽い症状でも、コールセンターや地域の診療所などに相談してください。基礎疾患がある人は、事前にかかりつけ医と体調不良時の対応について話し合っておくことも重要です。

同時流行や重症者が急増した場合は、医療機関のキャパシティーを超えることが予想されます。病床が限られていることを理解し、予防に努めることが求められます。

―冬場を乗り越える対策は。

医療機関は、感染症の疑いがある患者の動線を分ける、診察時間をずらすなど院内感染を防ぐ対策を継続する必要があります。

体調が悪い時は学校や仕事をしっかり休むこと。手洗いやマスク着用などの咳エチケット、人との適切な距離を取るよう心掛け、換気の悪い空間に大勢集まり、マスクをせずに近距離で会話をすることはなるべく避けてください。可能な限りインフルエンザワクチンを接種し、基本的な感染対策を徹底して同時流行を防ぎましょう。

問い合わせ窓口

県新型コロナウイルス感染症コールセンター
0570-082-820 (平日・土日祝日9時~21時)
時間外は受診相談 027-223-1111
前橋市保健所
027-220-1151 (平日・土日祝日8時30分~21時)
027-224-1111 (上時以外の時間)
高崎市保健所
027-381-6112 (平日8時30分~21時)
027-381-6123 (夜間・土日祝日)
県こころの健康センター(こころの相談)
027-263-1156 (平日9時~17時・土日祝日9時~13時半)
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