胃食道逆流症 食習慣見直しを

お医者様
群馬大医学部附属病院 消化器・肝臓内科 浦岡 俊夫さん

胸やけや酸っぱいと感じる呑酸など不快な症状を引き起こす「胃食道逆流症」。新型コロナウイルスの影響で例年とは異なる年末を迎えるが、普段より飲食する機会が増える時期は、原因となる食べ過ぎ、飲み過ぎには十分注意が必要だ。群馬大医学部附属病院消化器・肝臓内科教授の浦岡俊夫さんは「暴飲暴食や高脂肪食の取り過ぎといった食生活の習慣を見直すことが発症を防ぐ第一歩となる」と呼び掛ける。

成人の3割発症

胃食道逆流症は、胃の中にある食べ物を消化するために分泌される強い酸性の胃酸が逆流し、酸を防御する機能がない食道の粘膜が障害を起こす病気です。胸やけや呑酸などの違和感や痛み、ひどいと出血をすることもあります。

胃食道逆流症が起こる仕組み

大きく二つに分類されます。①「逆流性食道炎」は粘膜に炎症が起き、②「非びらん性胃食道逆流症」は粘膜に炎症はないものの、不快な症状が現れます。①の方が胸やけなどの症状が強く現れます。

20年前は成人の15%程度でしたが、最近では3割の人が発症するといわれています。増加理由は食事の欧米化で、肉などの動物性タンパク質や脂質の摂取量が増え、発症しやすい肥満の人が増えたことが挙げられます。腰が曲がり前かがみの姿勢になった高齢者にも多くみられます。また、胃潰瘍などの原因ともなるピロリ菌は、胃酸の分泌を低下させますが、水質環境の改善などでピロリ菌の感染率が低くなり、胃酸の分泌が活性したことも起因しています。

逆流するリスク

暴飲暴食をはじめ、急いで食べる、食べた後すぐに横になるといった習慣はよくありません。食道と胃のつなぎ目にある弁の役割を果たす下部食道括約かつやく筋が、急いで食べることで開きっ放しになり、胃酸が逆流するリスクが高まります。食べた後すぐに横になると食べ物が上がり、同じくリスクを高めます。さらに、食べ過ぎは胃酸を増やすことにもつながります。

油っぽいフライや脂肪の多い肉、アルコールやたばこは胃酸の分泌を高めます。食事は適量、よくかみ、ゆっくり食べ、すぐに横にならない、就寝直前に食事を避けるなど食生活の習慣を見直すことが重要です。

睡眠時は食道に胃酸が逆流しやいので、発症した場合は、枕を少し上げて頭を高くして寝ることが効果的です。

胃カメラで早期発見

食道は扁平上皮、胃は円柱上皮という異なる粘膜ですが、胃酸が上がり、慢性的に食道に炎症が起きると、食道の粘膜が胃と同じ上皮に置き換わる「バレット食道」と呼ばれる状態になり、がん化する可能性があります。

そうした症状に陥る前に早期発見し、早期治療することが肝心です。健康診断では、バリウムを用いた造影検査と内視鏡で直接粘膜を観察する胃カメラ検査がありますが、確定診断できるのは胃カメラです。

治療は胃酸を抑える薬物療法が基本です。一般的にプロトンポンプ阻害剤を服用し、重症の場合、強力なボノプラザンの使用が推奨されています。市販薬もありますが、医療機関を受診し、適切な薬の服用と生活指導を受けることが症状改善の近道です。

食事や生活での注意点と予防策
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