食欲をそそる 新米
おいしいご飯で 健康

稲穂を手に実の付き具合を確かめる 田中さん

新米の季節だ。収穫したばかりの米は光沢があり、ふっくらとした炊き上がりと口に含んだときの甘みが、いっそう食欲をそそる。米の主成分は炭水化物。体づくりに欠かせない三大栄養素の1つで、体内でブドウ糖に分解され、エネルギー源となる。本県では、各地で食味のよい品種を用いた独自のブランド米が生産されている。味比べをしながら食欲の秋を満喫してほしい。

四方を1200m級の山々に囲まれた高山村では、昼夜の寒暖の差を利用してさまざまな種類の作物が生産されている。村のブランド米「月あかね」もその1つ。稲刈りのころ、茜色に染まった空が美しく映え、月も出ていたことから、その光景にちなんで名付けられたという。

黄金色に染まり、重そうに頭を垂れる 「月あかね」

村を訪ねた9月下旬、収穫期を迎えた田中さんの田んぼは、黄金色をした「月あかね」の穂が頭を垂れ、サラサラと小気味よい音を立てて風に揺れていた。

「成長期に雨の日が多かったせいか、今年の出来はいまひとつ」と田中さん。それでも、たくさんの実が付いた穂を手に取りながら、台風などの被害もなく無事に刈り取りの日を迎えられた喜びをかみ締める。


休耕田を活用し栽培

田中さんが米作りを始めたのは25年前。それまで会社勤めをしていたが、知人から休耕田の活用を依頼されたのがきっかけで、少しずつ農業へ生活の軸足を移していった。

栽培面積は20aからスタート。徐々に借用地を増やし、昨年は5haまで拡大、収量は15tに上った。栽培品種は、2009年のブランド化の際に定めた「こしひかり」「ひとめぼれ」など4種類。収穫後は村の給食センターや東京のラーメン店、さらに地元の食堂や道の駅の直売所などに出荷しており、「『おいしい』という消費者の言葉が一番の励みになります」と田中さん。

春の種まきから田植え、夏の草取り、水の管理、収穫まですべての作業を1人でこなす。おまけに田んぼは100箇所余りに分散しており、作業効率も悪い。しかし、田中さんは「苗植えや刈り取りは機械がやってくれますから」と笑い飛ばす。

ブランド化で品質向上

9年前に「月あかね」生産組合が発足。現在の組合員は17人で、田中さんが組合長を務める。「互いに切磋琢磨せっさたくましており、ブランド化が品質向上にとても役立っています」

組合員たちは食の安全・安心にこだわりながら、最大限農薬を使わない栽培を心がけ、丹精込めて米作りを行っている。「食感がモチモチしていて粘りがあり、冷めてもおいしいのが特長です」と、田中さんは胸を張る。この言葉を裏付けるかのごとく、米・食味分析鑑定コンクール:国際大会で毎年のように、組合員の中から金賞や特別優秀賞などの受賞者を輩出している。

酒造会社からの依頼で、昨年から酒米も作り始めた。今年は他の組合員2人と合わせて2haで栽培、順調な生育に手応えを感じた。「来春、私たちが育てた酒米で仕込んだ酒を、飲めるかもしれません」と期待を寄せる。

*制作協力/群馬県農政部

元気な暮らしに 役立つ 栄養のお話
高崎健康福祉大学健康福祉学部
健康栄養学科教授
綾部 園子
今月の食材

生産

日本人の主食である米の年間消費量は、1962年をピークに減少を続けています。これは日本人の食事が、ご飯中心からおかず(副食)を多く食べる食事に変わってきたためで、一人当たり年間消費量は、118kgから54kgに半減しています。しかしながら、「ごはん」という言葉が「飯」だけではなく「食事」全体を意味することに変わりはなく、日本人の食事の中心に位置しています。

成分

米の主成分は炭水化物で、体内でブドウ糖に分解されて吸収され、エネルギー源として利用されます。ブドウ糖は脳のエネルギー源になります。たんぱく質のアミノ酸組成は、小麦よりも良好で、成人の1日に必要なたんぱく質の1/7を米から摂取しています。エネルギー源となる主な栄養素は、炭水化物、たんぱく質、脂質ですが、1日に必要なエネルギーの50~65%を、炭水化物から摂取することが望ましいとされています。

100gあたりの栄養成分値

ご飯と健康

ご飯を食べると肥満になると考えて敬遠する人もいますが、主成分の炭水化物から生じるエネルギー量(4kcal/g)は、脂質(9kcal/g)の半分以下です。炭水化物の中でも、米に含まれるデンプンは砂糖やブドウ糖よりも緩やかに吸収されるので、血糖上昇速度も緩やかで、さらに小麦粉と違って米粒のまま炊くので、消化吸収に時間がかかり、腹持ちがいいといわれています。従ってご飯は腹持ちがいい割には、肥満になりにくい食べ物といえます。肥満を防ぎ、健康寿命を延伸するためには、脂肪や砂糖の多い食べ物は控え、ご飯を主食として、主菜・副菜を揃えたバランスのよい食事と適度な運動と睡眠が基本です。

炊き方

ご飯は炊飯器で炊く人が多いと思います。おいしく炊けるよう加熱速度や時間がプログラムされています。吸水時間も含まれますので、すぐに炊いても大丈夫です。お米の量はきちんと計ることが大事です。その後洗米しますが、最初のとぎ水にはぬかが多く含まれますから、手早く取り換えます。きちんと水加減をして、スイッチオン。蒸らしもプログラムに入っていますので、すぐにほぐして余分な水分を逃がせば、ふっくら仕上がります。

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