食事と運動で
骨粗しょう症予防
井上病院長
井上 誠さん
骨の量が低下して骨がもろくなり、骨折しやすくなる「骨粗しょう症」。高齢化とともに増加傾向で、国内に1000万人以上の患者がいると推定されている。年齢を重ねてからの骨折は寝たきりの原因にもなりかねず、日ごろの食事や運動を見直すことで発症のリスク回避につなげていくことが肝心だ。井上病院長の井上誠さんは「若々しく過ごすために、バランスの取れた食事や適度な運動を心掛けてほしい」と呼び掛ける。
閉経後の女性に多い
骨は日々新しくつくられては古くなったものが壊されていくというサイクルで形成されています。しかし、加齢や生活習慣の乱れ、ホルモンバランスの変化でサイクルの均衡が崩れ、骨の量が減り、もろくなってしまいます。
骨の量を調べる骨塩検査で、若年成人の骨量の平均値(YAM値)と比較し、YAM値70%未満または、エックス線で「いつの間にか骨折」していることが分かった場合、骨粗しょう症と診断します。
女性ホルモンの分泌量が低下する、特に閉経後の女性に多い病気で9割近くを占めます。ホルモン異常による内服薬の処方、腎臓や肝臓が悪い、多量のアルコール摂取や喫煙をする方も発症しやすいです。
寝たきりのリスク
初期症状はほぼありません。次第に腰痛や腰が重いといった違和感を覚えます。腰痛がひどいと感じて受診したら骨折していたというケースもあります。以前より身長が縮んだ、背中が曲がったと感じたら、痛みがなくても圧迫骨折している可能性があるため、すぐに受診してください。
動かすことの多い手首や背骨、股関節などの骨折頻度が高く、尻もちや手をついた時、物を取ろうと動いた瞬間など通常では考えられない場面で折れてしまいます。
骨折は寝たきりになるリスクを高め、ADL(日常生活動作)のレベルが下がることで寿命が縮みます。認知症や誤嚥性肺炎を引き起こす要因ともなります。早期発見をするためには、閉経後の女性をはじめ、発症しやすい疾患や習慣がある方は、40、50代の時に一度検査を受けることを勧めます。
健康寿命延ばす
予防する上で非常に重要なのが、食事と運動療法です。食事では、牛乳や豆腐、魚類といった骨をつくるカルシウムをはじめ、カルシウムの吸収を助けるビタミンD、骨の形成に関わるビタミンK、タンパク質が大切で、魚や海藻類、納豆などバランスの良い食事を取ることを心掛けてください。
運動は骨を強くする効果が期待でき、転倒予防にもつながります。また、日光浴でビタミンDが活性化され、カルシウムの吸収が促進されます。
コロナ禍において、家に閉じこもり、散歩もしないといった生活を送る高齢者の方は、進行しやすいため、特に注意が必要です。室内でもできる片脚立ちやスクワットなど、健康寿命を延ばす運動「ロコモーショントレーニング」を取り入れてください。