日常動作回復を サポート

作業療法士 井野 紗矢香さん

けがや病気で「食事をする」「顔を洗う」「料理をする」「字を書く」といった日常生活に不可欠な動作が難しくなった人に、リハビリテーションを通して、動作の回復を支援するのが作業療法士だ。善衆会病院(前橋市)に勤務する井野紗矢香さん(33)は、作業療法士となって10年目。患者によって回復させたい機能や目指すものはさまざまだが、院内外の専門家と連携して、一人一人がその人らしく暮らせるよう支援している。

さまざまな道具を使って日常動作の回復を支援する井野さん(左)

患者に合わせ組み立て

高校で卒業後の進路を考える時、医療系専門学校を見学して、パンフレットに掲載されているのを見たのが、作業療法士を目指すきっかけ。「折り紙や塗り絵を使ったリハビリとは、どんな仕事なのだろう」と興味を持った。

前橋市内の専門学校に進学し、国家試験を目指して勉強を始めた。大変だったのは臨床実習。「患者さんは一人一人違うので、学校で学んだことをリハビリに生かすことが難しかった」と振り返る。

善衆会病院には2019年4月から勤務。「最初に勤めた病院は、治療が終わった後のリハビリや、療養のためのリハビリが中心だった。ただ、手術したばかりとか、病気をした直後など、急性期の患者さんのリハビリはあまり経験がなく、仕事の幅を広げたいと思った」

1日に入院患者3~4人、外来患者5~6人の計10人ほどに対応する。肩や肘、手首、指といった上半身のリハビリが多いが、高齢者の体力回復や認知症患者の認知機能の回復訓練なども行う。「アクティビティー」と呼ぶビー玉やお手玉などの道具、さらに折り紙や塗り絵などの活動を、患者の状態に合わせて組み合わせていく。

体の回復機能だけでなく、「トイレに一人で行けるようになりたい」「料理をしたい」といった日常生活動作の獲得や、「一人で完全にはできなくても、介助の量を減らしたい」など目指すものは異なる。そうした目標に向け、患者の希望に沿って、必要なリハビリを組み立てて実践していく。そこにやりがいを感じるという。

多職種との連携必要

病院のリハビリ室で日常生活動作ができても、病棟でも日常的に行えなければ、自宅に戻ることはできない。そのため医師や看護師、理学療法士といったさまざまな職種の専門家との連携が必要で、情報交換やコミュニケーションが欠かせない。退院日が近づくと、自宅に出向いて、手すりや段差を確認したり、福祉用具の提案もする。その際、例えばケアマネジャーといった院外の専門家とも情報交換・共有が必要となる。

自宅や介護施設でのリハビリもある。「退院した患者さんが家に帰った後、地域と関わり、地域で生活していくことを支援するため、訪問リハビリにも取り組みたい。自宅で過ごす人や、デイサービスといった施設でリハビリを行う人もいる。そういった人に対応するためには介護保険の知識も必要で、ケアマネジャーの資格についても勉強し、仕事の幅を広げていきたい」と意欲的だ。

発行
上毛新聞社営業局「元気+らいふ」編集室
FAX.
027-254-9904