冬野菜で免疫力アップ
日本生まれの新野菜
この時季、ホウレンソウやブロッコリー、大根、白菜、コマツナなどさまざまな種類の冬野菜を店頭で見かける。寒い季節に取れる野菜には、βカロテンとビタミンCが豊富なものが多い。免疫力を高め、細胞を活性化してくれる働きがあるので、風邪を引きやすい冬場にはうってつけだ。「医食同源」という言葉もある。調理を工夫して、たくさんの野菜を摂取するよう心掛けたい。
ブロッコリーとケールを掛け合わせて生まれた新しい野菜「アレッタ」。JA佐波伊勢崎地域で、市場出荷向け栽培が始まったのは5年前。農家9人が試行錯誤しながら取り組んだのが始まりで、現在は15人に増えた。
町田さんもその1人。利根川沿いに続く土手のすぐ北側に広がる畑の3カ所で、アレッタを栽培している。面積は延べ15aで、約2000本を育てている。
「収穫は11月に始まり3月まで続きます」と町田さん。JAに勤務する父親の圭市さん(59)が休日に手伝ってくれるほかは、ほとんど1人で作業している。ブロッコリーのように小さな花蕾を付けるアレッタは葉、茎、つぼみを全て食べることができる万能野菜。次々に成長する側枝を、町田さんは長さ25cmほどに切り取り、手際よく収穫していく。
アレッタの味に感動
「実家で祖父母が田畑で働き、両親はJA職員という環境で育ったので、農業にはずっと興味を持っていました」と町田さん。学生時代は家を離れ、卒業後は一般企業に就職したが、「自分が本当にやりたいことは何だろう」と考えたとき、農業への憧れが心の底から湧き上がってきたという。
就農は5年前。父親が試験的に栽培したアレッタを初めて口にし、あまりのおいしさに感動。「自分でも作ってみたい」と思ったのが、大きな転機となった。「最初は何も分からず、祖父母や父親に教わりながらのスタートで、失敗の連続でした」と振り返る。
町田さんが所属しているJA佐波伊勢崎園芸協議会一般野菜部会のアレッタ生産者には、先輩がたくさんいて、いろいろアドバイスしてくれる。「本当に助かっています」
収穫後は、生産者でデザインした袋に詰め、すべてJAに出荷。東京市場や県内のスーパー、直売所に送られる。2019年のJAの出荷量は約1.6tで年々増加している。
幅広いレシピに合う
アレッタの魅力は、ケールの苦味を抑えた甘味と高い栄養価にあるという。ゆでたり炒めたりして熱を加えることで甘みが増し、茎は歯ごたえが楽しめる。栄養面でもビタミンKやカロテンなど大切な栄養素を豊富に含んでおり、「ブロッコリーとケールの特長をいいとこ取りした」と言われるほどだ。
「いろいろな料理に使えるのもアレッタの素晴らしさです」と町田さん。パスタやチャーハン、天ぷら、和え物、さらにスムージーや浅漬けにしてもおいしいという。「彩りもよく、どんなレシピにも合います」。残念なのは、アレッタを知らない人が多いことだ。
「生産者仲間を増やし、アレッタをたくさんの人に食べてもらいたい」と話す町田さん。努力した分、収穫量となって成果が表れる農業に、やりがいと手応えを感じている。
元気な暮らしに
役立つ
栄養のお話
桐生大学医療保健学部
栄養学科准教授
荒井 勝己
由来
アレッタという野菜をご存じでしょうか?名前からは外国から伝来した野菜のイメージがありますが、実は日本でつくられ、2011年に品種登録された野菜です。ブロッコリーと青汁の原料として知られているケールを掛け合わせた品種で、葉、花蕾、茎まですべてを食べることができます。また、ケールの苦みが抑えられ、ブロッコリーの甘みがあることから生のままでも食べられます。
栄養成分
ブロッコリーとケールはビタミンやミネラルなどの栄養成分が豊富ですが、アレッタはさらにビタミンCやビタミンK、水溶性食物繊維などが、2つの野菜と比べてもより多く含まれています。
ビタミンCは、柑橘系果実に多く含まれているイメージがありますが(レモンで100mg/100g)、実はブロッコリーは柑橘系果実よりも多く、アレッタはさらにビタミンCを豊富に含んでいます。ビタミンCはタンパク質であるコラーゲンをつくるために不可欠なビタミンで、皮膚や粘膜の健康維持に役立ちます。また、皮膚のメラニン色素の生成を抑える働きもあります。さらに、鉄の吸収を促進したり、抗酸化作用により動脈硬化や心疾患を予防することが期待できます。
ビタミンKは、出血した時に血液を固めて止血する血液凝固に関わる因子の活性化に必要なビタミンです。また、骨に存在するオステオカルシンというタンパク質を活性化し、カルシウムを骨に沈着させて骨の形成を促す作用があります。
水溶性食物繊維は、水に溶けるとベタベタしたゼリー状になり、小腸での糖質の吸収の速度を緩やかにし、食後の血糖値の上昇を抑える効果があります。また、コレステロールやナトリウムを吸着し体外に排出することで、血中コレステロール値の低下や高血圧を予防する効果もあります。
収穫時期
アレッタは主に露地栽培では夏に種をまき、翌春2月下旬頃から4月にかけて収穫時期とされています。実際に出荷されている時期は地域によって異なり、三重県では12月頃から春にかけて、また、現在、生産を行っている群馬県では11月から翌春3月頃まで出荷しています。