患者の
「自律生活」支援
理学療法士
吉田 竜敏さん
理学療法士は、けがや病気、高齢などにより低下した運動機能の回復をサポートするスペシャリスト。東前橋整形外科病院(前橋市)に勤める吉田竜敏さん(31)は、主に手術を受けて退院した人を対象に、外来のリハビリテーションを担当している。リハビリ期間を終えた後に患者が自分で生活をコントロールできるよう、患者の不安に寄り添い、最善のリハビリを追求しながら日々の仕事に当たっている。
震災で笑顔の力実感
小学生から高校生までサッカーをしていて、けがは日常茶飯事。幼少期からの親友がJリーガーになることが決まり、選手をサポートできる理学療法士の道を選んだ。茨城県内の大学に進学し、卒業目前に発生した東日本大震災の被災経験により、新たな思いが芽生えた。「1人で不安だった時に友人の家族が助けてくれ、笑顔一つでこんなにも心が救われるんだと感動した。サッカー選手に限らず、目の前の患者さんを心から笑顔にしたいと思った」
地元に戻り、東前橋整形外科病院に入職。足、脊椎、手、膝関節、股関節といった多岐にわたる専門外科医がいるため、多くの患者が来院する。一般病棟、回復期病棟、外来の3部門それぞれにリハビリ科があり、勤務する理学療法士は総勢28人。担当する外来には、入院中に想像もできなかった生活の支障を訴える患者が訪れる。そうした苦悩を家族など周囲に話せない人も多く、気持ちに寄り添うことがリハビリの出発点だ。
「不安を抱えたままではリハビリの効果も十分ではなくなる。まず心情を吐き出してもらい、リハビリを通じて心から笑顔になった時は本当にやりがいを感じる」。現在は外来リハビリテーションセンター長を任され、医師との勉強会を定期的に開いては難渋症例について相談したり、最善のリハビリ法を話し合ったりしている。
運動で地域を元気に
スポーツ選手をサポートする夢も持ち続け、上武大サッカー部のトレーナーを務めている。コロナ禍の今、改めて「運動する大切さ」を感じている。「思うように体を動かせないと、表情から笑顔が消えてしまう。運動能力を維持するため、テレビCMの間にスクワットを5回してみるなど、ほんの少しでもいいので運動を生活に取り入れられるといい」と勧める。
個人だけでなく病院のレベルアップも目指している。「後進育成に力を入れ、まずはリハビリで群馬を代表するような施設にしたい。運動を通してみんなを笑顔にし、地域を元気にするのが使命」