糖尿病予防で
透析回避へ
おうら病院(邑楽町)
病院長
秋山 仁さん
2016年の厚生労働省の調査によると、「糖尿病」は国内で患者、予備軍ともに1000万人いるとされる「国民病」だ。新規に人工透析を行う患者のうち、4割以上を占めるのが3大合併症の1つ「糖尿病性腎臓病」患者で、年間1万6000人が新たに導入している。おうら病院長の秋山仁さんは「透析治療にならないよう、健康診断を必ず受けてほしい。早期治療で糖尿病でなかった状態に戻すこともできる」と訴える。
75歳以上3人に1人
糖尿病は血糖値が高い状態が続き、さまざまな合併症を引き起こします。特定健診による保健指導などで予備軍は減っているものの、高齢化に伴い、75歳以上の3人に1人は糖尿病を発症しているといいます。
血糖を一定に保つ役割を果たす膵臓から分泌される「インスリン」が、自己免疫疾患などで出なくなる1型と、分泌低下や抵抗性(効きにくさ)が増大する2型に分けられます。糖尿病患者のうち9割を占めるのが2型です。初期症状はなく、高血糖になると、のどの渇きや尿の回数の増加、倦怠感や体重減少が現れます。
重症化防ぐ治療
3大合併症は、足の切断につながる「糖尿病性神経障害」、失明の危険がある「糖尿病性網膜症」、腎機能低下で人工透析が必要になる「糖尿病性腎臓病」があります。
糖尿病性腎臓病は、最近まで糖尿病性腎症と呼ばれていました。これまではタンパク尿が強くなってむくみなどの症状が現れてから腎機能の指標である「eGFR値」が低下していましたが、血圧を下げる薬(RAS阻害剤)の開発などで、最近では典型的な症状が出ずにeGFR値が低下する症例が増えています。
人工透析は血液透析と腹膜を使って血液をきれいにする腹膜透析がありますが、多くは前者です。血液透析では、週に3回、1日4時間の通院が必要となります。血液を体外に出し、透析器で余分な水分や老廃物を取り除き、きれいになった血液を再び体内に戻します。
腎機能低下を防ぎ、人工透析を遅らせる薬剤があります。血糖値が高いときだけインスリンの分泌を促進させる「GLP-1製剤」、体内の糖を尿から排出する「SGLT2阻害薬」が最新治療薬として注目されています。
また、2019年から県や県医師会などが連携し、「糖尿病性腎臓病重症化予防プログラム」を進め、市町村で行う健康診断のデータから、糖尿病の疑いのある人を抽出して保健指導を行っています。
食事と運動の見直し
肥満になると、インスリンが効きにくくなる可能性が高まります。日ごろの食事や運動の生活習慣を見直すことで予防につながります。
食後の血糖値を上げないために、炭水化物を少し減らし、ゆっくり食べることです。食べ方の順番も重要です。最初に肉や魚などのタンパク質を取り、次に野菜、最後に米やパンなどの炭水化物を取ってください。血糖値の上がり方が緩やかになります。
果物は1日1種類(果糖として1日20グラム。ミカンなら2個まで)。クルミやアーモンドなどのナッツ類は血糖値が上がりません。間食を控えて糖質を減らし、インスリンの分泌を抑えることが予防の第一歩です。
食後30~40分たってからの有酸素運動とレジスタンス運動を組み合わせると効果的です。30分程度のウオーキング、1セット20~30回のスクワット(支えが必要な場合は、いすなどにつかまる)やラジオ体操が有効です。夕食後に体を動かすと、良質な睡眠にもつながります。継続することが一番大切です。