肺がんは、気管支や肺を覆う細胞から発生するがんで、特徴や治療方針が大きく異なる「小細胞肺がん」と「非小細胞肺がん」の二つに分類されます。
小細胞肺がんは、進行が速いため、発見時にはほかの臓器へ転移していることが多く、極めて悪性度が高いです。手術では対応できず、抗がん剤や放射線で治療を行います。
肺がんの多くは非小細胞肺がんで、がん化する細胞のタイプによって「腺がん」や「扁平上皮がん」があります。男女ともに腺がんの割合が最も高く、特に女性は7割(男性は45%)に上ります。小細胞肺がんに比べて抗がん剤や放射線は効きにくいですが、進行は遅く、早期発見して手術をすることで、完治できる可能性もあります。
肺の部位によってがんの種類が決まっているのではなく、組織診断をしないと、どの種類のがんなのかが分かりません。特に小細胞肺がんは日ごと、週ごとに進行していくので、早期発見が何よりも重要です。
原因の多くは喫煙です。たばこを吸わないと、男性7割、女性4割の患者が減るといわれています。発症リスクは喫煙をしていない人と比べると、腺がんは2倍、扁平上皮がんは12倍、小細胞肺がんは14倍とされています。受動喫煙も1.2~1.3倍リスクが高まるとの報告があります。そのほかにも、アスベストといった有害化学物質やPM2.5による大気汚染などが挙げられます。
初期症状ない
慢性閉塞性肺疾患(COPD、肺気腫と慢性気管支炎の総称)や、間質性肺炎に罹患していると、肺がんになりやすいため、喫煙習慣の見直しが予防の第一歩です。
初期では目立った症状は出ません。進行すると、息苦しさや胸の痛み、せきや血痰、顔のむくみや体重減少、呼吸時に「ゼーゼー」と音がするなどの症状が現れます。脳や骨、肝臓や副腎に転移しやすいです。
早期に発見するため、1年に1回、健康診断で胸部エックス線検査を必ず受けてください。エックス線で発見できないこともあるので、息苦しさやせきが長期間続いている場合は、CT検査の受診を検討してください。
新しい治療も
予防として禁煙のほか、食事も重要です。喫煙で大量に消費されるビタミンCを多く含むブロッコリーやチンゲンサイなどの緑黄色野菜や、イソフラボンを多く含む豆腐や納豆などの大豆食品の摂取に予防効果があると考えられています。
治療は手術、放射線、抗がん剤のほかに、緩和治療も重要と考えています。骨転移など痛みを伴うケースも多く、気持ちの面からもサポートする必要があります。
がんの原因となる分子を攻撃する「分子標的薬」や、がん細胞を攻撃する力を保つ「免疫チェックポイント阻害薬」といった薬物療法をはじめ、免疫療法や、遺伝子変異を特定する個別の「がんゲノム医療」など、さまざまな新しい治療法が出ています。働きながら治療している方もいます。がんの進行も治療に対する反応も人それぞれです。たとえ進行がんであっても決して諦めず、希望を持って治療に臨んでください。