元気を支える ~医療・介護・福祉の現場から~

「楽しく生きていく」 力に

命に関わる病気と向き合う患者の心身の痛みを和らげ、家族が抱える問題に応えることが、緩和ケア認定看護師の役目の一つだ。県立小児医療センター(渋川市)に勤務する石関梨華さん(37)は、「小児医療にも緩和ケアが不可欠」と考え、認定資格を取得して8年が過ぎた。がんを患う家族を持った経験を生かし、患者と家族が「楽しく生きていける」ように医師や看護師らと連携してサポートしている。

緩和ケア認定看護師
石関 梨華さん
相談者の話をじっくり聞き、アドバイスする石関さん

小児医療に不可欠

幼い頃、母ががんを患い長期入院した。日常生活は様変わりし、母が死ぬかもしれないとおびえた経験から医療への興味が芽生えた。姉の助言を受けて県内の看護大学に進学。在学中から「がんの看護」に携わることを希望し、県立小児医療センターに入職して16年目を迎えた。

転機は小児がんの高校生を担当した2年目に訪れた。不治のがんとは告知されていなかった本人から「死ぬの」と問われ、答え方が分からないまま「死なないよ」と嘘をついた。成人が対象の「緩和ケア」だが、小児医療にも絶対に必要だと痛感。「心身ともに苦しむ患者と家族の辛(つら)さにきちんと向き合うために緩和ケアを学びたい」と当時の看護師長に伝えた。その思いをくみ取り、師長は研修のできる県立がんセンターへの異動を後押ししてくれた。

がんセンターの血液腫瘍科で2年間、治療法をはじめ、痛みや倦怠(けんたい)感などを緩和する看護技術、家族との関わり方まで実務と研修を積んだ。その後、認定看護師養成学校の試験に合格して半年間学び、29歳で緩和ケア認定看護師の資格を取得した。

ケア領域広げたい

認定看護師の役割は、習得した看護技術の「実践」と他の看護師への「指導」「相談」を含む。「実践」を続けるうちに、看護の技術や調子を崩した患者と家族への分かりやすい病状説明の仕方、言葉の選び方などについて医師や看護師の相談を受けるようになった。

患者から「医師や看護師になりたい」と伝えられたり、助言した家族から「心が晴れた、安心した」と言われることも増えた。医療スタッフだけでなく、院内学級の教師とも連携して子どもたちが夢を諦めずに学べる環境を整え、時には社会や友人とのつながりを保てるよう助言し、治療へのモチベーションを維持できるように努めている。

患者と家族が大事に思うことを大切にし、嘘をつかないことが信条だ。「病気によって当たり前の日常を送れない患者と家族が全員そろって食事したり、川の字で寝たり…。ささやかな楽しさを重ねられるように常に考え、楽しく生きていくこと」を支えている。現在は集中治療室で先天性疾患の患者と家族のケアを担当する。病状をある程度予測できるがんは、本人の要望を尊重できるが、他の病気では難しい面がある。「今後は、がん以外の病気の緩和ケアも進めていきたい」

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