真っさらな状態
高校卒業後、介護とは関係のない専門学校に進んだ。そのころ母親から、現在働いている会社が社員を募集していると聞きいて興味を持った。「何の資格も持っていなかった。真っさらな状態だった」
介護に関する固定観念やマイナスイメージがなかったことが幸いし、抵抗なく仕事を覚えることができた。「現場にはいろいろな人がいて、『介護はこういうもの』と受け入れられた」と振り返る。
仕事を覚えながらヘルパーの資格取得を目指して勉強。休日に研修を受けたため、3カ月間はほとんど休めなかったという。さらに、現場で経験を積んだ後、国家試験を受けて介護福祉士資格を取得した。
勤務する施設は、天然温泉付マンションや介護付有料老人ホーム、ショートステイ、デイサービス、住宅型有料老人ホームなどを集約した「都市型天然温泉付複合施設」。14年間で複数の部門を経験した。
今は介護付有料老人ホームで働いており、入居者とショートステイ利用者合わせて約80人の介護に当たる。施設職員は介護福祉士や看護師、リハビリスタッフ、事務担当ら約60人。利用者全員の情報を共有して、一人一人の利用者に、気持ち良く過ごしてもらえる介護を実践する。
緊張続く夜間
勤務は早番、日勤、準夜勤、深夜勤のシフト制。昼間は利用者の食事や口腔(こうくう)ケア、排せつ、入浴介助、安否確認などが主な仕事。夜間はナースコール対応が忙しい。「寝つけなかったり、認知症の方のナースコールがかなりあり、その度に見に行く」。ベッドから出て、歩き回るうちに転倒し、けがをする危険もあるため、速やかな対応が必要。スタッフが少ない夜間は緊張が続くという。
介護現場ではコミュニケーションが大切だと感じる。「最初は利用者と何を話せばいいのか分からなかった」。天気や出身地、好きなものや嫌いなものなどの話題を取り上げたり、戦争や震災の経験者なら、その戦争や震災のことを調べて、話し掛ける工夫をした。
大変な仕事ではあるものの、利用者の「ありがとう」「いてくれて良かった」といった言葉が励み。目指しているのは、利用者と密に関わって、楽しく過ごしてもらう介護だ。「すぐに実現するのは難しいかもしれないが、こんな気持ちを常に持ち続けたい」