上司に勧められ
嬬恋村のキャベツ農家に生まれ、中学時代はスキー競技に熱中。そのためけがが多く、骨折などで入院するたびに優しく接してくれる看護師に憧れるようになった。県内の看護専門学校を卒業後、太田市と前橋市内の病院を経て2010年から桐生厚生総合病院に勤めている。
「認知症看護認定看護師の研修を受けてみないか」。こう上司に打診されたのは、消化器内科時代の14年秋。同僚の信頼も厚く、周囲を明るい雰囲気にする人柄を見込まれてのことだった。「両親が共働きだったこともあり、おじいちゃん、おばあちゃんが大好き。高齢者と接する際の自然体の自分を大事にしよう」と受講を決めた。
都内で約8カ月間の研修後、千葉県内の病院実習を経て16年に資格を取得。その後、「より資格を生かせる職場へ」と回復リハビリテーション病棟に異動し、けがや病気の治療を終えて生活復帰を目指す患者のサポートに当たっている。
みんなが笑顔に
リハビリ病棟の入院患者は半数以上が高齢者で、認知症を患う人も多い。環境の変化から興奮状態になったり、昼夜の感覚が逆転したりして夜間にナースコールが鳴りやまないこともある。そこで対策として病室に日付を大きく掲示。リハビリの合間に塗り絵や動画視聴などを促し、日中の活動を増やした。また、新型コロナウイルスの感染対策で外出できない患者のために、スタッフらが折り紙で草花やこいのぼりなどを制作。フロア内を装飾して季節感を演出している。「日付の把握やレクリエーションは認知症の症状緩和だけでなく、生活復帰の観点からも必要」と指摘する。
月に1度の合同カンファレンスでは、リハビリの状況や退院後の生活について説明するなど、患者の家族へのケアも欠かさない。コロナ禍で接触や面会が制限される中、患者や家族の不安を少しでも取り除こうと、県内で同じ資格を持つ仲間による「クレインの会」のリモート会議に参加。各病院の取り組みを参考にしている。
経験を通して、「認知症患者のお世話は看護の基本。いろんな視点から見て、その人本来の部分と向き合うことが大事」と強く感じている。市民向けの認知症講座などの講師として理解を深めてもらう活動にも意欲的で、「認知症でも普通に生活し、仕事をする人もいる。関わる人みんなが笑顔でいられる環境になるといい」と前を向く。