特集・眼精疲労/食と栄養「ブルーベリー」

期待できる 視覚機能改善

今月の食材

キイチゴ、スノキ、スグリ属などの小果(しょうか)類を一般にベリー類と呼ぶ。ブルーベリーは、ヨーロッパをはじめ、世界中で最も広く食されているベリー類で、ツツジ科スノキ属に分類される。藍黒から青色の実をつけ、眼精疲労といった視覚機能の改善効果などが期待できるアントシアニンを豊富に含んでいる。

高崎健康福祉大農学部 生物生産学科教授
松岡 寛樹さん

由来

日本では戦後の1950年代にブルーベリーの栽培適応試験が始まり、80~90年代にかけて急速に栽培面積を拡大し、果実として認知され始めました。その後、目に対する健康機能の研究が進み、マスコミで取り上げられ、急速に広まっていきます。

栄養成分

ブルーベリーは下の表に示す栄養素以外に、15種類のアントシアニンを含んでいます。アントシアニンとはポリフェノールの一種であり、赤や青紫といった華やかな色合いを持っています。アントシアニンは、菓子などの天然着色料として、人工着色料の代替に用いられてきました。

近年になると、アントシアニンは生体内酸化ストレスを防止し、がん予防効果、血圧上昇抑制、血流改善、肝機能障害軽減効果、そして視覚改善効果などの生活習慣病に対する多彩な生理機能を有することも分かってきました。特にブルーベリーエキスでは、臨床試験において、眼精疲労や精神疲労に対し、改善効果があることが明らかにされているだけでなく、児童の仮性近視や近視初期段階に有効であることも報告されています。

近年、スマートフォンが普及したことで、幅広い世代にわたり、目の健康に対する懸念が強まっています。デザートのほかに、普段の料理にも取り入れ、おいしく食べて目をいたわってください。

100gあたりの栄養成分値
今月の食材

生食のほかに、ジャムやジュースの加工などさまざまな食べ方ができる「ブルーベリー」。抗酸化作用のあるアントシアニンを豊富に含み、眼精疲労の改善も期待できる。毎年、収穫時期の6月から9月にかけ、前橋市のはなぶさ有機農園では、ブルーベリー狩りが楽しめる。

赤城南麓の 観光名所に

4年前に他界した先代の林明秀さん(享年72)が赤城山南麓を“ブルーベリーの里”にしようと始めた観光農園。現在は長女の林伴子さん(43)が代表を務め、今年開園20周年を迎える。

前橋市小坂子町と嶺町の2カ所の園で合わせて1.5ヘクタールあり、ブルーベリーのほか、和栗、サツマイモの収穫を体験できる。ブルーベリーを使った手作りの焼き菓子やジャムなど加工品の販売も手掛ける。

多品種で収穫体験

栽培するブルーベリーは、ハイブッシュ系とラビットアイ系の2系統、21品種900本。年間収穫量は例年1.5トンに上る。

栽培や収穫に携わる曽根田さん(右)と林代表(中央)夫婦

6月上旬から7月下旬まで収穫できるのがハイブッシュ系。実が大きく皮が柔らかくて甘みも強い。食味に優れているが、収穫量が少なく栽培が難しい。一方、ラビットアイ系は樹勢が良く、湿気や病気に強い。収穫量が多い分、実が小ぶり。収穫は7月下旬から9月中旬まで。期間中いつでも収穫体験ができるよう、多くの品種を育てている。

実を大きく甘く

昨年1月から、知人の紹介で管理するのが、同市の地域おこし協力隊をしていた曽根田高輝さん(49)。未経験だったが、「農業全般の知識はあったのでやってみよう」と職員の指導を受け、地道な作業に汗を流す。

安定して収穫するために、12月から2月の休眠期に枝を剪定(せんてい)する。日当たりや風通しを良くすることで、病気や害虫の発生を防ぐことができる。手入れの良しあしが味を左右するともいわれる重要な作業だ。

花芽が多いと、実に栄養が行き届かない。「収穫量が減っても実を大きく甘くしたい」という思いから、花芽がつく枝の半分程度を切り落とし、“余分な実”を摘み取る。

無農薬栽培のため、特に苦労するのが害虫対策。葉を食べる毛虫や、幹の中に入り込むカミキリムシは、実が育たず木を枯らす原因となるため、入念に駆除する。

十分甘くなった色合いや大きさなどを見極め、根気よく一粒ずつ収穫する。「安心して食べてもらえるように育てている。収穫する子どもたちの喜ぶ姿が励みになる」と笑顔を浮かべる曽根田さん。林代表は「父親の意思を引き継ぎながら、観光農園として赤城山南麓の名所にしていきたい」と力を込めている。

メモ
県内のブルーベリーの主な産地は、渋川市、沼田市、みなかみ町。2018年の栽培面積85.8ヘクタールは全国3位、年間収穫量270.6トンは全国2位。育てるポイントは、最低2本、同じ系統の違う品種を植えると受粉しやすい。土は酸性にし、半分程度の枝を剪定する。
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