特集・脂質異常症

生活習慣改善で 予防を

食生活の欧米化や運動不足で、患者数が増えている「脂質異常症」。動脈硬化が進行し、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などになる恐れもある。厚生労働省の調査によると、国内の患者数は220万5000人(2017年)で、20年前と比べ2倍以上と大幅に増加している。今号では、脂質異常症の原因や予防策をはじめ、脂質改善が期待できる栄養やそれを含む食材、効果的な運動方法を紹介する。

お医者様

脂質異常症は、体形が太っている、痩せているではなく、血液中のコレステロールや中性脂肪といった脂質の数値が正常でない状態をいいます。以前は高脂血症と呼んでいましたが、07年から診断名が変更されました。

脂質は脂分のため、大半が水分の血液に溶け込めません。そのため、血液中のタンパク質と脂質が結合してリポタンパクという粒子を形成することで、脂質を体内の必要な箇所に運ぶことができます。このリポタンパクの増減が発症要因になります。

7割は女性患者

初期症状はないため、定期的に健康診断を受けて早期発見に努めてください。空腹時の血液検査で、①LDL(悪玉)コレステロールが高い(1デシリットル当たり140ミリグラム以上)②HDL(善玉)コレステロールが低い(1デシリットル当たり40ミリグラム未満)③中性脂肪が高い(1デシリットル当たり150ミリグラム以上)―3項目のうち一つでも当てはまっていると、脂質異常症と診断されます。

加齢とともに患者数が増え、 特に女性に多いのが特徴です。全体の7割を超える156万5000人(17年)おり、男性の2.4倍です。50歳前後の更年期に女性ホルモンが低下することで、今までと同じ生活習慣を送っていてもLDLコレステロールや中性脂肪の値が高くなる方が多くいます。

動脈硬化が進行

主な原因は、食事と運動の生活習慣によるものです。カロリーが高い食事を取り続けた上、運動不足だと内臓脂肪が蓄積され、脂質異常症の発症リスクが高まります。過度な飲酒は中性脂肪の値を上げることにもつながります。

LDLコレステロールの値が高い場合、腎臓や甲状腺に関する別の病気が原因の可能性もあります。また、中性脂肪の値が高いと糖尿病を合併していることも考えられるほか、極端に高い場合は急性すい炎を発症することもあるため、注意が必要です。500人に1人の割合で、遺伝的に生まれつきLDLコレステロールの値が高い「家族性高コレステロール血症」の方もいます。

改善しないと、血管の壁が厚く硬くなって詰まりやすくなる動脈硬化が進行します。心臓では狭心症や心筋梗塞、脳では脳梗塞、足では閉塞性動脈硬化症など全身の血管で発症するリスクが高まり、場合によっては命に関わる事態になります。

食事と運動が重要

予防には、食事を見直すことが重要です。緑黄色野菜や食物繊維が豊富な海藻類やキノコ類などを多く取ると良いです。果物は食べ過ぎると中性脂肪の値が上がることもあるので適量を心掛けてください。飽和脂肪酸を含む肉の脂身や菓子類はLDLコレステロールの値を上げるため、過剰摂取はよくありません。肉を食べる場合は、ヒレなど赤身が多いものがお勧めです。

一方、同じ脂質でもエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)といった不飽和脂肪酸を含むサバやイワシなどの青魚は、LDLコレステロールの値を下げる効果があります。

運動習慣も身に付けてください。1日30分程度のウオーキングのほか、ジョギングやサイクリング(各15分程度)などの有酸素運動を週2、3回すると効果的です。自分に合った方法で日頃から体を動かしてください。

医師の指導で食事療法や運動療法を行い、数値を改善できない場合は、薬物療法になります。症状に応じてLDLコレステロールの値を下げる「スタチン」、中性脂肪の値を下げる「フィブラート」、両方とも下げる「エゼチミブ」などの飲み薬を使用します。最近では、心臓や脳の血管病に対してリスクが高い人には、注射剤を活用することもあります。

健康診断で再検査だった場合は必ず受診し、医師の指示に従ってください。早期発見し、生活習慣の改善を基本に予防に努めてください。

お医者様

脂質異常症の治療薬 服薬続けて 血管病回避

脂質異常症の治療薬には大別して、主にLDLコレステロールと、中性脂肪(トリグリセリド)を減少させる薬があります。LDLコレステロールを減少させる代表的な薬として、肝臓でのコレステロールの合成を抑制する薬(スタチン系)があります。一方、中性脂肪を減少させる代表的な薬は、肝臓でのトリグリセリドの合成を抑制する薬(フィブラート系)や多価不飽和脂肪酸(魚に多く含まれる脂肪酸)を含む薬があります。さらに、両方とも減少させる薬では、小腸でのコレステロールの吸収を阻害する薬(エゼチミブ)があります。

脂質異常症の治療薬による副作用は比較的少ないですが、重大な副作用として、ごくまれに横紋筋融解症を起こすことがあります。横紋筋融解症とは、筋肉障害により、手足や全身の筋肉痛、しびれや脱力(感)などの症状が現れ、筋肉の成分(ミオグロビン)が血液中に流れ出る病気です。飲み始めてから、筋肉が痛い、手足の力が入らない、尿の色が濃い(赤褐色になる)などの症状に気づいた場合は、放置せずにすぐに主治医に連絡してください。

脂質異常症はほとんど症状がなく、薬の効果も血液検査の数値(検査結果)でしか分かりません。しかし、心筋梗塞や脳梗塞といった血管病を回避するためには、生活習慣の改善とともに医師の指示に従って薬の服用を続けることが重要です。食事療法や運動療法で高い効果が表れれば、服用を中止することができる場合もありますが、効果がないと自己判断して薬を減らしたり中止したりしないようにしましょう。

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