高血圧や
夏バテ予防に
オクラは、アオイ科トロロアオイ属のアフリカ原産の植物で、その果実が食用になっている。エジプトでは紀元前から栽培され、日本には幕末から明治初期にかけて伝わり、1970年頃に一般に流通するようになった。夏が旬のオクラは、独特のぬめりと食感が特徴で、高血圧予防につながるカリウムのほか、葉酸や食物繊維などが多く含まれている。
桐生大医療保健学部
栄養学科准教授
荒井 勝己さん
栄養成分
カリウムは、細胞の浸透圧のバランスを維持するほか、神経刺激の伝達、心臓や筋肉機能を調節する働きがあります。腎臓ではナトリウムの再吸収を抑えて尿中への排せつを促すため、血圧を下げる効果があります。
葉酸は、水溶性のビタミンB群の一つで、赤血球の形成を助けます。近年、妊婦が葉酸を十分に摂取することで、胎児の先天異常のリスクを減らすことが知られています。
オクラに含まれるペクチンは、水溶性の食物繊維で、小腸での栄養素の吸収速度を緩やかにし、食後の血糖値の上昇を抑える効果があります。また、コレステロールを吸着し、体外に排出することで血中のコレステロール値も低下させます。さらに、ナトリウムを排出する効果もあるので、高血圧の予防も期待できます。オクラの粘質物の成分には糖とたんぱく質の複合体があり、胃の粘膜の保護やたんぱく質の吸収を促進させ、夏バテ予防にも最適です。
産地と選び方
国内で露地栽培のオクラが収穫できる主な時期は、7~9月です。2018年産地域特産野菜生産状況(農林水産省)によると、年間国内出荷量は1万708トンで、主な産地の鹿児島県4333トン、高知県1882トン、沖縄県1101トンと九州・四国の上位3県で約7割を占めます。本県は全国8位の224トンですが、本州では第1位の出荷量を誇っています。
店頭でオクラを選ぶときは、長さ6~10センチ程度のものを目安に、濃い緑色でさやの角(星形)がはっきりしていて柔らかく、全体がきれいに産毛に覆われているものがお薦めです。
ネバネバして独特の食感を持つ「オクラ」は、夏場に出荷のピークを迎える。夏バテ予防のほか、体内の余分なナトリウムの排出を促すカリウムが豊富に含まれ、高血圧の予防も期待できる。県内一のオクラの出荷量を誇る前橋市で、最も多く生産している内山英明さん(41)は、最盛期に1日1万5000本以上を出荷している。
新鮮なおいしさ
届ける
祖父が農家で父は手伝っていたが、自身は農業に関わることはなかった。県内の専門学校を卒業後、JA前橋市に就職。働いているうちに「野菜づくりをしたい」という思いが強くなっていった。
10年間勤め、30歳で農家に転身。未経験ながら関係者から野菜づくりを学び、「内山農園」を立ち上げた。オクラをはじめ、ブロッコリーやキャベツ、タマネギやナス、コメやムギなど幅広い野菜や穀物の生産に汗を流している。
「赤城の恵」に認証
市内3カ所合わせて25アールの畑で、オクラを栽培する。従業員2人を雇い、フィリピン人の技能実習生3人を含む6人で収穫作業に当たっている。
オクラ畑を前に収穫作業に当たる内山さん(左から3人目)と従業員
品種は一般的な五角形の「ピークファイブ」。肥料を土に混ぜ、農業用マルチシートを張る。4月下旬に種をまいた後、保温性があり、通気性の良い専用の不織布(ふしょくふ)を敷く。
こまめに草むしりをするほか、特に目を光らせているのが、新芽の成長を止めるアブラムシや、茎の中に入り込んで枯らすフキノメイガなどの害虫だ。定期的に消毒をしているものの、化学肥料や農薬の低減にこだわり、生産するオクラは、同市のブランド「赤城の恵」に認証されている。
大きさ見極め
「今年は種をまいた後の4月末に霜が降り、半分近くの芽をだめにしてしまった」と振り返る。初めての経験で、5月に種をまき直した。オクラは連作できないため、毎年違う畑で栽培する。今年育てている畑の一つは、追肥しても生育が悪く、生産に向けて二重に不安がつきまとった。
そうした中、例年より量は少なめだが、6月下旬から収穫作業を開始。作業は10月上旬まで続く。「夏場の暑さも大変だけど、葉に触れるとかゆくなる」と笑う。
曲がりやすれ具合などの品質基準があり、長さ8~10センチ未満のMサイズが最も商品価値が高い。目検討で大きさを見極め、はさみで次々に切り取っていく。傷が付きやすいため、丁寧に扱い、S・M・Lのサイズごとに仕分け、JAや直売所に出荷する。「収穫までたどり着いてほっとしている。これからも安心して食べられる、新鮮でおいしいオクラを届けたい」と意欲を見せている。
メモ
県内のオクラの主な産地は、前橋市、藤岡市、高崎市など。2018年の作付面積17ヘクタールは全国7位、年間出荷量224トンは全国8位。家庭でも栽培しやすく、一般的に種をまく時期は5月上旬。