元気を支える ~医療・介護・福祉の現場から~

ともに寄り添い 成長を

精神保健福祉士は、精神的な障害のある人の社会復帰や日常生活を支援する専門職。医療機関だけでなく、福祉施設、学校や企業などへ活動の場が広がっている。約20年の精神科病院勤務を経て、3年前から生活介護・就労継続支援B型事業所「アトリエ アート・オン」(高崎市)で働く立上葉子さんは、同事業所のサービス管理責任者を務める。支援計画作成やさまざまな制度の手続きなどを通し、利用者の生活の質の向上や就労支援に取り組む。

精神保健福祉士
立上 葉子さん
「病院で働いていた時の経験が生きている」と話す立上さん

働きながら取得

初めから精神保健福祉士を目指していたわけではなかった。大学では栄養について学んだが、精神医療に関心を持ったことなどから、高崎市内の精神科病院に就職した。働きながら精神保健福祉士の資格を取得し、病院が運営する生活訓練施設(援護寮)やデイケア・ナイトケア施設、相談支援事業所で栄養士・指導員・精神保健福祉士として社会復帰をサポートした。

デイケア・ナイトケア施設では、多様なプログラムを実践してそれぞれの自立に向けてサポート。「スポーツや趣味活動などのプログラムが充実していた。精神保健福祉士が中心となって取り組んだのはソーシャル・スキル・トレーニング。例えば、日常生活の何げない苦手な場面をロール・プレイなどを通して、克服していく。その経験は今も役立っていると思う」と振り返る。

相談支援事業所では精神医療に関する相談や福祉サービスの利用希望者の支援に携わった。「アート・オンの利用者も担当。その過程で自由な空気や利用者が創作した作品の力強さにひかれ、アート・オンに移ることにした」

アート・オンは表現活動の支援を軸とする施設だ。利用者が生み出す個性的な表現は、既成概念にとらわれず、大胆で自由。知的障害者ら約30人が利用し、絵画制作といった芸術的活動やオリジナルグッズ制作など作業を行っている。

さまざまな仕事

アート・オンで働き始めた時からサービス管理責任者を務めており、「利用者支援の管理や支援計画を作成したり、新たに事業所を利用する人の“入り口”を調整したりするのが主な仕事。困っているスタッフの相談に乗ることもある。利用者の送迎など、何でもやりますよ」と笑う。

病院とは規模も目的も異なることに加え、コロナ禍で思うようにいかないことや、理想と現実とのギャップに悩むこともある。その中で大切にしているのは「利用者と支援者が、ともに寄り添い、一緒に成長していきたい」との思いだ。「自分ができるアドバイスなんてほんの小さなもの。それでも、その積み重ねの中で、少しでもいい方向に変われるかもしれない。成果はすぐに出ないし、簡単ではないけれど、時間を掛けて、こんなことが実現できたらいい」

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