感染対策を構築
同院の医療安全管理室の感染管理係では、ウイルスや細菌をはじめ、抗菌薬が効きにくい「薬剤耐性菌」などによる感染症を対象に、院内で発生させない、広げないためのマニュアル作りを行っている。各部署の医師や看護師、検査技師、薬剤師ら多職種が集まり、週に1回のカンファレンスで検体の結果や適切な処方、患者の対応などを確認。効率的な感染防止に向けてマニュアルを更新し、体制を整える。「職員が感染対策を行えているか、サーベイランス(監視)の目的もある」と話す。
新型コロナの感染拡大当初には災害対策本部を立ち上げ、感染対策や院内で発生した場合の対応について確認。病院出入り口のサーモグラフィー設置や消毒液の配備、体調の悪そうな人への声掛けなど、水際対策を強化した。「コロナが特別というわけではないが、職員一人一人の感染経路を遮断しようという意識が高まった」と振り返る。
工業系から一転
もともと看護職に興味があったわけではない。高校は工業系で、自動車科に所属していた。だが、当時は就職氷河期。3年時の担任に「これからは医療の時代だ」と看護系の専門学校への進学を勧められた。「学費がないと言ったら、学費を免除してくれる病院まで探してくれた」と恩師への感謝をにじませる。
栃木県足利市内の病院に勤務後、2006年に地元の伊勢崎市に戻り、同院に入職。外科病棟からICUに異動した11年、定年退職を控えた看護師長に将来の目標を問われた。「感染管理ならいろいろな部署で役に立つ。挑戦してみたら」と導かれ、感染管理に関する業務を3年間務めた後、長野県内の研修学校を受講して15年に資格を取得した。
デスクワーク中心だが、「サーベイランスのためには院内を見回ることも大事」と、合間を見て現場の職員と情報交換を行う。看護師として患者と接する時間も大切にしており、人生経験が豊富な患者との会話を楽しみながら状況把握に努めている。
新型コロナを経て、「感染管理は一人ではできない」と改めて思う。「まさにチーム医療で、さまざまな立場の人が得意分野を生かし、問題を解決できる」と語る。「自分の仕事は、感染管理に関する達成度などのデータを蓄積して可視化し、患者や職員の安全を担保すること。感染管理の知識を持つ人がもっと増え、より良い病院運営につながるといい」と展望している。