特集・関節リウマチ

薬で炎症 防げる時代へ

進行すると関節破壊が起こり、生活に支障をきたす「関節リウマチ」。女性に多いのが特徴で、以前は30~50代がピークだったが、高齢化に伴い、最近では60~70代での発症も増えている。進行が早く、合併症を伴うこともあり、早期発見、早期治療が求められる。今号では、関節リウマチの原因や予防策をはじめ、合併症に関わる栄養やそれを含む食材、効果的な運動方法を紹介する。

お医者様

関節リウマチは、自己免疫疾患の一つで、関節を囲む袋状の膜(関節包)の内面を覆う組織の「滑膜(かつまく)」が、免疫異常によって自立的に異常増殖し、慢性的に炎症を引き起こす病気です。つまり、関節リウマチは「慢性持続的な滑膜炎症」です。日本リウマチ学会によると、患者は全国で82万人(2020年)に上ります。

本来滑膜は、関節がスムーズに動くための滑液をつくり、軟骨の栄養にもなっていますが、異常な増殖で腫れや痛みの症状が現れます。進行すると、滑膜が分厚い組織となってタンパク質を分解する酵素や炎症性サイトカインを放出し、軟骨や骨を壊して、関節が変形して機能を失うまでになります。ヒトには200以上の関節があり、その全てに滑膜が存在しています。手の指と膝に多く発症しますが、足の指や肩など、どの関節でも起こり得ます。


8割は女性

関節リウマチの8割は女性患者で、女性ホルモンが関係していると考えられています。滑膜組織に免疫異常が起こる原因は、はっきりと分かっていませんが、関節リウマチを発症しやすい遺伝子が特定されているほか、環境要因としては、細菌やウイルス、生活習慣が関わっているとされています。

最近注目されているのが歯周病で、関節リウマチの患者さんに罹患(りかん)頻度が高く、歯周病の治療で関節リウマチの症状が改善するとの報告があります。喫煙が関節リウマチの発症や悪化に関係しているとされ、精神的、肉体的なストレスも発症要因の一つと考えられています。

強皮症やシェーングレン症候群といった自己免疫疾患を持つ患者さんが、関節リウマチを併発することもあります。

進行が早い

炎症症状が強いと、関節の症状だけでなく、発熱や倦怠(けんたい)感、体重減少など全身症状のほか、骨粗しょう症、腎障害や呼吸器障害(間質性肺炎など)を合併することもあります。鉄欠乏性貧血や炎症性貧血、腎性貧血といったさまざまなタイプの貧血を発症する患者も多くいます。

関節が壊れ始めるスピードが早いため、発症から最初の2年間を「治療機会の窓」といい、しっかりとした治療が重要です。その後の生活に大きく関わってきます。

予防策として、歯周病の治療や禁煙、ストレスをためないなどが挙げられますが、早期発見、早期治療が鍵となります。1カ所でも手の指のしわが寄らずに腫れてきたら関節リウマチを疑い、かかりつけ医に相談するか、リウマチ科がある専門の医療機関を受診してください。

飛躍的に進歩

栄養や運動の生活指導といった基礎療法の上に、①薬物療法②手術③リハビリテーション④ケア―の4本柱をトータルマネジメントとして捉え、治療に当たっています。

治療の中心となるのが薬物療法。21世紀に入ってから生物学的製剤(点滴や皮下注射)治療薬やJAK阻害薬などの内服薬が治療薬として導入され、慢性的な炎症をしっかりコントロールできる時代になりました。そのため、関節内の炎症の中心である滑膜切除の手術はほとんど行われなくなり、関節が壊れにくくなったので、人工関節による再建手術も年々減ってきています。

機能回復するには、理学療法士や作業療法士の指導の下、関節を保護しながら筋力や体力をつけるリハビリテーションも必要です。車いすなど身体機能が落ちている人には、生活の質を上げるためのサポートをします。

一昔前は、発症したら最終的に寝たきりになると恐れられていた病気ですが、治療薬の飛躍的な進歩によって健康な人と同じように、ハンディキャップなく日常生活が送れるようになってきています。現在は、治療の目標として、症状が落ち着いて安定した状態を維持する「寛解」を目指します。治療を途中でやめると、病気が再燃することがあるので、自分の判断で中断は絶対にしないでください。早期に発見し、しっかりと治療をしていきましょう。

お医者様

関節リウマチの治療薬 感染注意し 服用法の確認を

関節リウマチの治療薬(抗リウマチ薬)には、飲み薬のメトトレキサートをはじめとした従来型合成抗リウマチ薬と、免疫に関わる分子を標的とする分子標的型合成抗リウマチ薬(JAK阻害薬)のほか、注射で投与する生物学的製剤があります。通常はこれらを1種類あるいは2種類以上組み合わせて治療します。

メトトレキサートは、免疫抑制作用と抗炎症作用があり、世界的な標準治療薬として使用され、関節リウマチ治療では中心的役割を担う最も重要な薬です。この薬は1週間に1日または2日だけ服用するという特殊な内服薬で、特に開始して数カ月の間は、受診するたびに服用の量や回数が変わる場合があります。誤って連日服用すると、重篤な副作用が現れる可能性があるので、自分の服用方法や薬の量を毎回確認し、毎日使用する薬ではないことをしっかり理解した上で服用してください。

メトトレキサートで十分な効果が得られない場合、炎症を引き起こす物質の働きを抑える生物学的製剤や、同等の効果が見込めるJAK阻害薬が選択されます。生物学的製剤には自分で注射できるものもあります。いずれの薬剤も感染症に対する注意が最も必要です。また、JAK阻害薬の副作用として、特に帯状疱疹の発現頻度が高いことが報告されています。日常生活でも感染対策をしっかり行い、症状に気付いたら主治医または薬剤師に連絡してください。

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