元気を支える ~医療・介護・福祉の現場から~

円滑な進行の 懸け橋に

病気や感染症の治療、患者の生活の質の向上に役立つ新薬は、患者とその家族にとって明日へつながる希望の星。治験事業を行うアイロム(東京都)社員の町田桂さん(33)は、派遣先の県立がんセンターで新薬承認に向けた臨床試験の円滑な進行に取り組む治験コーディーネーター(CRC)。製薬会社や病院内の調整をはじめ、参加する患者の心身の負担をできるだけ軽減するため、細やかなサポートに努めている。

治験コーディネーター
町田 桂さん
診察に必ず立ち会い、患者の話に耳を傾ける町田さん(左)

納得して参加を

治験は新薬の安全性や有効性を立証するため、患者や健康な人の協力を得てデータを集める臨床試験のこと。治験コーディネーターは製薬会社や関係する医師、医療スタッフ、被験者との懸け橋となり、治験がつつがなく進むように情報共有や日程の確認・調整、相談などを主な業務としている。

臨床検査技師を目指して群馬大に進学。就職ガイダンスで初めて「治験コーディネーター」について知った。臨床検査室での実習後、「いろいろな人と関わるコーディネーターの方が向いているかもしれない」と考え、大学卒業後、治験事業を行う企業に就職して11年。県立がんセンターに派遣されて3年目を迎えた。

がんセンター内で治験開始が決定すると、関係する医師や医療スタッフに集まってもらい、使用薬や服薬方法、注意事項などのルールを共有する。その後、医師が治験の基準に合う患者に新薬の効果や副作用の説明をして参加を勧める。コーディネーターは患者に納得して協力してもらうため、検査が増えることや通院日程などの詳細な説明を行い、不安や疑問に丁寧に答えている。

実施ルール守る

患者の保護と治験の信頼性を確保する目的で作られた「治験実施計画書」を逸脱しないように進めることが、仕事の要になる。服薬が始まると、患者の来院に合わせて診察前に体調の変化や症状を聞き取り、医師と共有しておく。診察には必ず同席し、多忙な医師に計画書の注意事項やルールを伝えて減薬や休止といった適切な判断を促している。医療スタッフとも情報共有し、副作用などのデータは随時、症例報告書に入力する。

「患者さんには治験のメリットを最大限受けてもらい、デメリットは最小限にしたい」という一念が仕事の原動力。患者の雰囲気や話の間、しぐさから不安に気付ける力を養い、医師との橋渡しになれるように努めている。「患者さんや関係者の皆さんからたくさん学ばせていただき、今がある」と感謝する。

「参加して良かった。元気になれたよ」という患者の声や関わった新薬が発売されたニュースが励みになってきた。今後も「不安を抱える患者さんが構えることなく、本音を話せるように寄り添っていきたい」と話す。ウェブ勉強会に積極的に参加し、他施設の取り組みや最新の医療知識の吸収にも努めている。

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