強い信頼関係
助産師になったきっかけは、最初に勤めた病院で、助産師を間近で見たこと。「妊産婦と助産師の強い信頼関係に魅力を感じました」。助産師となり、いくつかの医療機関を経て7年前から現在の病院に勤務。分娩(ぶんべん)管理や産後の健診のほか、妊産婦や出産後の母親の支援に携わる。助産師の魅力ややりがいについて「年齢や経験によって変わるのでは。ただ、それぞれの助産師が興味を持ったことを伸ばしてあげたい。そこからやりがいを見つけてほしい」と話す。
助産師が接するのは主に妊産婦や母親だが、その家族らに影響を与えることがある。「目の前にいるママの話を聞いて、ちょっと不安を取り除いてあげるだけで、家族や家庭の雰囲気が変わることがあると思います。何げない訴えや表情を読み取り、環境や生活にも配慮しながら支援する。難しくもありますが、やりがいを感じます」
新しい資格取得
同病院の横田英巳院長は妊産婦のメンタルヘルスを重視し、周産期メンタルヘルス外来を設置。さらに「より気軽に相談できる場を」として相談ルームも設け、佐藤さんが担当している。「妊産婦はただでさえ不安なのに、最近はストレスを感じやすい環境の方が少なくありません。そうした方をサポートしたい」。妊産婦の相談や産後ケアに取り組む中、公認心理師の資格を取得した。公認心理師は、専門知識や技能をより広い領域で生かし、心理職の質の向上を図ろうと2017年に創設された心理職では国内初の国家資格。「心理を勉強することで、これまで以上に妊産婦の力になったり、より専門的なケアができるかもしれないと考えました」
産後の数週間は、母親にとって心身の回復に大切な時期だが、支援もなく家事や育児に追われ、食事や休息も取れずに疲れきってしまったり、里帰りしても実母や義母が働いていて結局1人で家事と育児をしなければならず、産後うつにつながるケースが増えつつある。こうした状況の改善を目指して横田院長は「産後ケア」に力を注ぐ。この春には、現在は使用していない同病院関連施設を産後ケア専門施設に改修する予定だ。
「新しい施設の仕事を受け持つことになります。助産師の仕事は『出産、退院すればそれで終わり』ではありません。何かあった時にはいつでも来てほしい。新しい施設では育児支援にも取り組み、いつも寄り添っていられるような存在、病院でありたいと思っています」