葉酸摂取に
適した食材
アスパラガスは、ユリ科アスパラガス属に分類され、ヨーロッパからロシア南部が原産。主に観賞用として江戸時代後期に日本に伝わり、大正時代になって食用目的の栽培が始まった。妊婦が不足しやすい葉酸を豊富に含み、健康的な子どもを産むためにも摂取することが勧められている。
高崎健康福祉大農学部
生物生産学科教授
松岡 寛樹さん
由来
アスパラガスというと、中高年以上の世代には水煮のホワイトアスパラが強く印象に残っていると思います。昭和40年代(1965~74年)ごろからグリーンアスパラガスの栽培が活発になりました。緑黄色野菜として評価され、和洋中問わず幅広く料理に合わせやすいことから人気が出ました。最近では、表皮にアントシアニンを多く含む紫色アスパラガスも栽培されるようになってきました。
栄養成分
アスパラガスから名前をとったアミノ酸として、アスパラギン酸が知られています。アスパラギン酸は非必須アミノ酸ですが、エネルギー源として最も利用されやすいため、疲労回復につながります。その他、アンモニアを解毒し、肝機能改善にも役立ちます。
ビタミンも豊富で、β-カロテンや葉酸が多く含まれています。特に栄養機能食品としても指定されている葉酸は、ビタミンB12とともに赤血球を作る造血ビタミンです。緑色の葉を持つ野菜に多く含まれ、通常の食事では不足することはありませんが、妊婦は不足しがちで、胎児の成長を促すためにも積極的な摂取が望まれます。追加で葉酸を摂取する目安量は1日240マイクログラムとされ、アスパラガスを2~3本食べると、それを満たすことができます。
葉酸は、疾病リスク低減表示が認められている特定保健用食品の関与成分として認可されていますので、サプリメントとしても摂取することは可能です。しかし、どうせなら十分量の葉酸が摂取できるアスパラガスを、おいしく食べた方が良いのではないでしょうか。
ほんのり甘く食感があり、食卓に彩りを添える「アスパラガス」。ゆでや炒め、揚げてもおいしく、疲労回復につながるアスパラギン酸や、妊婦に必要な葉酸などの栄養を豊富に含む。長年アスパラガス栽培を行う沼田市の小林修一さん(72)は、新たな栽培方法に取り組みながら、12月から3月まで収穫作業に汗を流す。
新たな栽培方法に
挑戦
アスパラガスの生産が盛んな利根沼田地域で栽培が始まったのは50年ほど前。小林さんも30年以上前から「冬の仕事」として始めた。栽培が難しい野菜の一つで、農家の高齢化も影響して出荷量は年々減少し、10年ほど前と比べて大幅に減っている。
収穫したアスパラガスを手にする小林さん(左)と育江さん
茎枯病の被害拡大
アスパラガスは全国的に露地栽培が主流で、4~5月が収穫時期。同じ株から何年も収穫する。県内で一般的なのは、株を毎年育てる昭和村発祥の伏せ込み促成栽培。ハウス内のポットで育てた苗を4月に畑に定植し、成長した株を秋に掘り上げ、ハウス内に植え直す(伏せ込む)。小林さんは、高値で売れる12月から収穫を始めるために、大宝早生(たいほうわせ)とウィンデルの早生品種を扱い、早い時期から収穫を進めている。
今季は夏場の集中豪雨や急激な気温の低下などで、発育に悪影響を及ぼす茎枯(くきがれ)病の被害が多発した。「例年は県内でも多く出荷しているが、今季はかなり少ない」と小林さんは肩を落とす。「近年は天候に左右されやすく、連作障害もあるからやめる農家が多い」と漏らす。
今までにない太さ
そうした状況を打開するため、小林さんは常にアスパラガスの品種や栽培方法の研究を進め、8年ほど前から明治大農学部から情報を収集。36あるハウスのうち今季は2カ所を使い、同大開発のハウス内で栽培を完結させる方法を試験的に始めた。
ハウス栽培は天候の心配がなく、ポットで育った苗をそのままハウス内で定植するので、病気にもかかりにくい。灌水(かんすい)チューブを敷いて定期的に水や液肥をまく。「1株当たりの収穫量も多く、今までにない太さの出来栄えは、脳裏から離れない」と手応え十分。収穫後の4月からは、同じハウス内でトマト栽培が成功するかを試す予定だ。
小林さんと妻の育江さん、長男夫婦の淳さんと知子さんの家族4人で収穫作業に当たり、長さ26センチ以上の規格サイズを丁寧にハサミで切り取っていく。
「どうしても出てしまう細かったり曲がったりして出荷できないものを商品化したい」と考え、専門家に研究依頼をしている。好奇心旺盛な小林さんの新たな挑戦は、これからも続く。
メモ
アスパラガスの県内産地は、利根沼田地域。JA全農ぐんまによると、2021年度の作付面積は13.3ヘクタール、20年度の市場への出荷量は23.5トン。家庭でプランターでも栽培でき、春に出回る苗を肥料と混ぜた土に植え、乾燥させない。翌春から2~3年収穫できる。