特集・椎間板ヘルニア/食と栄養「ウナギ」

骨をつくる 栄養豊富に

今月の食材

海洋環境の変動などにより、漁獲量が減少傾向となっている「ウナギ」。国内で流通しているウナギのほとんどが養殖されており、天然ものはごくわずか。強い骨をつくるために必要なカルシウムやビタミンDなどが豊富に含まれている。

東洋大食環境科学部 健康栄養学科教授
高橋 東生さん

由来

国産のニホンウナギの生態は長らく謎に包まれていましたが、日本から2000キロメートルも離れた西マリアナ海嶺で産卵するなど、徐々に明らかになっています。ただ、河川等の生息環境の悪化や乱獲で絶滅の心配もされています。

農林水産省の漁業・養殖業生産統計によると、2020年度の漁獲量は66トンで、11年度の229トンと比べ、10年間で3分の1以下に減少しています。養殖も同様で約2万2000トンから約1万7000トンと減少傾向です。養殖生産量の最多は鹿児島県で国内シェアの40%を超え、2位愛知県、3位宮崎県の3県で約85%を生産しています。一方、群馬県でも新たにウナギの養殖が始められています。

栄養成分

夏の土用の丑(うし)の日に、ウナギを食べると良いと伝えられています。由来は諸説ありますが、江戸時代の発明家、平賀源内が発案した「うなぎ屋のPR」として広まったとされます。

ウナギは、たんぱく質やカルシウム、ビタミンA(レチノール活性当量)、B群およびビタミンDやEのほか、鉄分、亜鉛、脂質(DHA、EPA)、コラーゲンなど、夏バテ予防に効果的な栄養素が豊富に含まれています。カルシウムは、主に小腸上部で吸収され、ビタミンDは、腸管や肝臓でカルシウムとリンの吸収を促進する作用があります。従って、強い骨を形成するためには、カルシウムとビタミンDの摂取が欠かせません。

100g当たりの栄養成分値

栄養成分値の「白焼き」は、養殖ウナギを開いて、頭、骨、内臓等を除去し、タレを付けずに串焼きにしたものです。「かば焼き」は、通常に包装して店頭で販売されているものを分析して掲載されています。

今月の食材

脂がのって味わい深く、スタミナ食材の定番として親しまれている「ウナギ」。たんぱく質やカルシウムなど、骨格をつくる上で重要な栄養を豊富に含む。太陽光発電などを手掛ける伊勢崎市のジースリーは、前橋市内にウナギなどの大規模養殖場を建設。6月の初出荷に向け、徹底した管理で育てている。

高級食材を 安く提供へ

養殖場のいけすの前に立つ金子さん(左)と社員

ジースリーは、2018年に国からウナギの養殖業の許可を取得。20年に自社の強みを生かし、最大出力800キロワットの太陽光発電を活用した「赤城山麓養鰻(ようまん)場」(3棟、敷地面積5000平方メートル)を前橋市内に建設し、本格的にウナギの養殖を開始した。


太陽光で水温保つ

ジースリーの社長を務めていた金子史朗さん(61)は「高額の食材を皆さんが週1回でも食べられるようにしたい」という思いから、ウナギの養殖事業に参入。中国や国内の養殖業者を視察して学んだ。

カナダのロストラータ種を中心に20年、21年に21万尾ずつ入荷。安価なウナギの提供を実現するために、現地の漁師から直接仕入れてコストを抑えている。0.2グラムの稚魚から出荷目安の300グラムまで約2年間育てる。15~16度の地下水を、太陽光発電でためた電気で温め、適温の28度にする。大きさごとに、いけすを分けて黒いビニールシートを張って暗くしている。

餌はサバやイワシの魚粉と水を専用機械で毎回こねて、朝夕2回与える。ウナギはストレスに弱く、酸素不足や寄生虫がつくとすぐに死んでしまう。「給餌前に電気をつけ、泳ぎ方や餌食いを目視して日々体調の変化を確認している。最初の年は半分くらい死んでしまったが、徐々に生存率は上がってきている」と手応えを感じている。

かば焼きの商品化

「どれも難しくてまだまだ分からないことばかり」というが、金子さん自身もさばいて、焼いて、味付けに至るまでの加工作業についても独学で習得している。

伊勢崎市内の飲食店と共同でタレの開発を進め、今夏の土用の丑(うし)の日に向け、かば焼きの商品化を目指している。「コロナ禍で飲食業界は厳しい状況が続いているが、一つの起爆剤にしていきたい」と力を込める。

「赤城養鰻上州鰻(うなぎ)」のブランド名で、県内を中心に安定的に出荷し、消費者に安く提供することを目指す。加工場も新たに稼働予定だ。「100%群馬で育てた安全安心なウナギを多くの人に食べてもらいたい。取り扱いたい方は問い合わせて」と呼び掛ける。ウナギのほかにチョウザメも養殖しており、「新たなメニューを考案する料理大会も開きたい」と夢は広がる。

メモ
農林水産省によると、2020年の養殖ウナギの収穫量は鹿児島県が最も多い7057トンで、全国の4割以上を占める。次いで愛知県、宮崎県と続く。県内でもウナギの養殖事業が始まっており、安価な提供が期待される。
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